高額療養費制度の所得区分と自己負担限度額を整理する

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医療費が高額になったとき、最終的な自己負担額を左右するのが「所得区分」です。

高額療養費制度は、すべての人が同じ上限額になるわけではありません。収入や年齢によって区分が分かれ、自己負担限度額が異なります。

制度の仕組みを正確に理解していないと、「思っていたより戻らない」「想定より負担が重い」という事態にもなりかねません。本稿では、所得区分と自己負担限度額の考え方を文章で整理します。


年齢で大きく分かれる制度設計

高額療養費制度は、まず年齢で区分されます。

・70歳未満
・70歳以上75歳未満
・75歳以上(後期高齢者医療制度)

年齢によって負担割合や上限額の設計思想が異なります。

ここではまず、利用者が多い70歳未満の区分から整理します。


70歳未満の所得区分

70歳未満の方は、標準報酬月額や所得水準に応じて5つの区分に分かれています。

上位所得者区分

標準報酬月額が高い世帯は「上位所得者」に該当します。
この区分では自己負担限度額は比較的高く設定されています。

計算式は「おおむね25万円超+医療費の1%」という形で、負担能力に応じた設計になっています。

一般区分

多くの現役世帯が該当する区分です。
自己負担限度額は「約8万円台+医療費の1%」という構造です。

この区分が制度の中心的な水準といえます。

住民税非課税世帯

所得が一定水準以下の場合、限度額はさらに低く設定されています。
おおむね3万円台から5万円台程度の水準になります。


計算式の特徴

70歳未満の場合、自己負担限度額は「定額部分+医療費の1%」という構造になっています。

これは、医療費が高額になるほど一定割合を負担する仕組みで、完全な定額制ではありません。

例えば、医療費が100万円かかった場合、

・定額部分(約8万円台)
・100万円のうち基準額を超えた部分の1%

が合算されます。

このため、医療費が極端に高額になると、限度額もやや上昇する構造になっています。


多数回該当という緩和措置

過去12か月以内に3回以上、高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降は「多数回該当」として自己負担限度額が引き下げられます。

一般区分であれば、約4万円台まで下がります。

長期療養が必要なケースでは、この多数回該当の影響が大きくなります。


70歳以上の区分

70歳以上になると、外来と入院で限度額の扱いが分かれる点が特徴です。

外来のみの上限額がまず設定され、それを超える場合は入院を含めた世帯単位の上限額が適用されます。

また、所得区分はより細かく分かれており、

・現役並み所得者
・一般所得者
・住民税非課税世帯

といった区分があります。

70歳以上では定額型の限度額が中心となり、計算式は70歳未満よりも簡素化されています。


世帯合算の仕組み

同一世帯内で複数人が同月に医療費を支払った場合、一定額以上の自己負担を合算できます。

これは特に子どもの入院や夫婦同時治療などのケースで効果があります。

ただし、合算の対象となるには「同一保険者」であることが条件になります。


月単位であることの重要性

高額療養費制度は「月単位」で計算されます。

例えば、入院が月をまたいだ場合、1月分と2月分は別々に計算され、それぞれに自己負担限度額が適用されます。

このため、入院時期によって実質負担額が変わることがあります。


医療費控除との違い

高額療養費は月単位、医療費控除は年単位です。

高額療養費で払い戻された金額は、医療費控除の計算上差し引きます。

両制度は連動しますが、計算の単位が異なるため混同しないことが重要です。


結論

高額療養費制度の自己負担限度額は、年齢と所得区分によって決まります。

・70歳未満は「定額+1%」構造
・70歳以上は定額型中心
・多数回該当で限度額が引き下げられる
・月単位で計算される
・世帯合算の仕組みがある

制度は複雑に見えますが、基本は「負担能力に応じた設計」です。

医療費が高額になる可能性がある場合、自身の所得区分と限度額を事前に把握しておくことが、家計設計の第一歩になります。


参考

厚生労働省
高額療養費制度に関する公表資料

日本経済新聞 2026年2月18日夕刊
マネー相談 黄金堂パーラー 医療費控除(下)対象となる費用

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