社会保障の危機から目を背けてはならない ― 給付と負担の現実をどう共有するか

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少子高齢化が進むなか、日本の社会保障制度はかつてない重圧に直面しています。
医療、介護、年金という生活の土台を支える制度は、確実に膨張を続けています。

一方で、選挙では減税や社会保険料の引き下げが声高に語られます。
負担を軽くしてほしいという国民の思いは当然ですが、制度の持続可能性を踏まえた議論が伴わなければ、将来世代への負担先送りが進むだけです。

いま必要なのは、耳あたりの良い政策論ではなく、構造の現実を直視する姿勢ではないでしょうか。


社会保障費はどこまで膨らむのか

社会保障給付費は、2000年度の約78兆円から、2025年度には約140兆円規模に達しています。
2040年度には約190兆円程度にまで増加するとの推計もあります。

わずか40年で約2.4倍に拡大する計算です。

同時に、生産年齢人口(15~64歳)は大きく減少します。
負担を支える側が減り、給付を受ける側が増えるという構造は、制度の持続可能性にとって極めて重い意味を持ちます。

これは一時的な景気変動の問題ではなく、人口構造という不可逆的な変化に起因するものです。


財源構造の現実 ― 公費と国債依存

社会保障給付の財源は、大きく分けて保険料と公費です。
おおむね6割が保険料、4割が国・地方の公費で賄われています。

しかし公費の主要財源である消費税収だけでは十分とはいえず、不足分は国債発行によって補われています。

この構造は、現在世代の給付の一部を将来世代に負担させていることを意味します。

財政赤字を通じた世代間移転が常態化すれば、制度の安定性そのものが揺らぎかねません。


「能力に応じた負担」の原則

少子高齢化社会を乗り切るための基本原則は、全国民が能力に応じて負担する仕組みの徹底です。

消費税は、所得のみならず資産保有状況もある程度反映した消費活動に課税する仕組みです。
所得は少なくとも資産を保有している高齢者層にも一定の負担を求めることが可能になります。

また、社会保険料の事業主負担がない事業所であっても、消費税は納税義務があります。
広く薄く負担を求める点において、社会保障財源との親和性は高いといえます。

一方、消費税率の引き下げを行うのであれば、資産課税の強化や給付水準の見直しなど、代替財源を明確に示す必要があります。
それなしに減税を進めれば、財政運営は不安定化します。


給付付き税額控除の可能性と注意点

近年議論されている給付付き税額控除は、低所得層への再分配強化策として有効な選択肢の一つです。
社会保険料の逆進性を補完する仕組みとして、多くの国で導入されています。

ただし、対象範囲や給付設計を誤れば、現役世代の負担が一段と重くなる可能性があります。
人口構造を踏まえた制度設計が不可欠です。

再分配強化と持続可能性の両立という難題を避けて通ることはできません。


社会保険料削減の現実的な条件

社会保険料の負担感が強いことは事実です。
しかし削減するためには、

  1. 他の安定財源を確保する
  2. 医療・介護などの給付水準を引き下げる

という選択を伴います。

このトレードオフを示さずに「負担軽減」だけを掲げることは、責任ある政策論とはいえません。


結論

社会保障制度は、国民の生命と生活を守る基盤です。
その持続可能性は、給付と負担のバランスの上に成り立っています。

少子高齢化という構造的課題のもとでは、負担の議論から目を背けることはできません。

必要なのは、
データに基づく現状認識の共有、
世代間公平を意識した制度設計、
そして国民への丁寧な説明です。

耳あたりの良い政策ではなく、将来世代に責任を持つ議論こそが、いま求められています。


参考

日本経済新聞「社会保障の危機から目を背けるな」2026年2月18日朝刊
厚生労働省「社会保障給付費の将来推計」
財務省「社会保障と税の一体改革関連資料」

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