老後資金というと、「年金はいくらもらえるのか」「貯蓄はいくら必要か」といった金額の話に目が向きがちです。
しかし、実務的に重要なのは、老後資金をどの制度で、どの順番で、どう使うかという構造です。
令和7年度税制改正によりiDeCoは拡充され、NISAは恒久制度として定着しました。
さらに多くの人が、退職金というまとまった資金を老後の入り口で受け取ります。
本記事では、
iDeCo・NISA・退職金を「三層構造」として整理し、老後資金をどう組み立てるか
という視点から考えていきます。
老後資金は三層で考える
老後資金を整理する際、次の三つの層に分けて考えると全体像が見えやすくなります。
・第1層:退職金
・第2層:iDeCo
・第3層:NISA・その他金融資産
それぞれ性格が大きく異なり、役割を混同すると判断を誤りやすくなります。
第1層 退職金という「入り口資金」
退職金は、多くの場合、老後の入り口で一度に受け取る資金です。
金額も大きく、老後資金全体の中核になるケースが少なくありません。
退職金の特徴は、
・受給時期がほぼ確定している
・税制上の優遇(退職所得控除)がある
・受け取った後は「自由に使える資金」になる
という点です。
一方で、退職金は再生産されない資金でもあります。
使い切ってしまえば、それ以降の補充はできません。
そのため、退職金は
「老後資金の土台」
「最初に守るべき資金」
として位置づけることが重要になります。
第2層 iDeCoという「年金的資産」
iDeCoは、老後資金の中でも特に年金色の強い制度です。
拠出時の所得控除、運用益非課税、受給時の税制優遇といった特徴を持ちます。
iDeCoの最大の特徴は、
・原則として途中引き出しができない
・老後まで資金を固定する制度
である点です。
この性格から、iDeCoは
「老後に必ず残しておきたい資金」
「生活費のベースになる年金的資産」
として位置づけるのが基本になります。
今回の制度改正で拠出枠が拡大しましたが、
iDeCoはあくまで中核ではなく中間層として使う制度である点は変わりません。
第3層 NISAという「調整資産」
NISAは、三層構造の中で最も柔軟性の高い資産です。
・いつでも売却できる
・使途の制限がない
・運用益が非課税
という特徴を持ち、老後前後の資金調整に向いています。
NISAは、
・生活費の補填
・医療費や住居関連費用
・退職金やiDeCoの取り崩し調整
といった場面で活躍します。
老後資金において、
「自由に動かせるお金」
があることは、精神的な安定にも直結します。
三層構造で考える「役割の違い」
三つの資産は、金額の大小ではなく役割で考えることが重要です。
・退職金:老後の基礎資金、最初に守る
・iDeCo:老後の年金原資、長く支える
・NISA:調整・補完・柔軟対応
この役割分担が明確であれば、
「どの制度をどこまで使うか」
という判断がしやすくなります。
60代以降に起きやすい失敗パターン
三層構造を意識しない場合、次のような失敗が起こりやすくなります。
・退職金を生活費に使いすぎ、後半で資金不足
・iDeCoに資金を寄せすぎて流動性が不足
・NISAを老後直前で使い切ってしまう
これらはいずれも、
「制度を単体で見てしまった結果」
起きる問題です。
三層構造で考える実務的な設計順
老後資金は、次の順番で整理すると設計しやすくなります。
1.退職金を「守る資金」として確保
2.iDeCoを「老後の年金原資」として位置づけ
3.NISAを「調整用資金」として活用
この順番を逆にすると、資金設計が不安定になりやすくなります。
結論
iDeCo、NISA、退職金は、それぞれ優れた制度ですが、万能ではありません。
重要なのは、どれか一つを最大化することではなく、三層としてどう組み合わせるかです。
老後資金は「増やす」だけでなく、
「守る」「使う」「調整する」
という役割を同時に考える時代に入っています。
三層構造で老後資金を整理することで、
制度に振り回されない、現実的で安心感のある老後設計が可能になるといえるでしょう。
参考
・税のしるべ「7年度税制改正によるイデコの拠出限度額の引上げは令和8年12月から実施」
・令和7年度税制改正関連資料(年金・税制関係)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
