亡くなった家族の遺品整理をしている最中に、タンスの奥や自宅の金庫から多額の現金が見つかる。
このようなケースは、決して珍しいものではありません。自宅で保管されている現金は一般に「タンス預金」と呼ばれていますが、その存在は生前・相続のいずれの場面でも、思わぬリスクをはらんでいます。
本記事では、タンス預金が抱えるリスクを整理したうえで、生前に見つかった場合と遺品整理中に発見された場合それぞれについて、実務上の注意点を解説します。
タンス預金とは何か
タンス預金とは、金融機関に預けず、自宅で現金のまま保管されているお金を指します。
高齢世代を中心に、金融機関への不信感や「いざというときの安心感」から、現金を手元に置いておく習慣が残っているケースも少なくありません。
日本銀行の資金循環統計によれば、2025年6月末時点で家計部門が保有する現金は約101兆円に達しています。そのすべてがタンス預金とはいえないものの、相当額が自宅保管されていると考えられます。
タンス預金が抱える主なリスク
タンス預金には、次のようなリスクがあります。
まず、物理的な消失リスクです。
火災や水害といった自然災害、あるいは盗難に遭った場合、現金は一瞬で失われてしまいます。預金と異なり、補償や追跡は期待できません。
次に、経済的価値の目減りです。
現金は利息を生まないため、インフレが進めば実質的な価値は低下します。長期間自宅で眠らせておくことは、資産保全の観点からも合理的とはいえません。
さらに、相続の場面ではトラブルや税務リスクが生じます。
相続人がタンス預金の存在に気付かないまま遺産分割を行えば、後日発覚した際に協議のやり直しが必要となります。また、申告漏れがあれば、税務調査の対象となり、追徴課税を受ける可能性もあります。
生前にタンス預金を見つけた場合の対応
タンス預金の持ち主が存命中に現金が見つかった場合、まず重要なのは本人の意思確認です。
家族が善意であっても、無断で処分や移動を行うべきではありません。
本人の同意が得られた場合は、本人名義の金融機関口座へ預け入れることを勧めます。
この際、家族名義の口座に入金すると、贈与とみなされるおそれがあるため注意が必要です。
将来の相続を見据えて生前贈与を検討する場合には、年間110万円の基礎控除や贈与の記録方法を踏まえ、計画的に進めることが求められます。
遺品整理中にタンス預金を発見した場合の注意点
遺品整理の過程でタンス預金を発見した場合、その現金は必ず相続財産に含める必要があります。
たとえ現金であっても、預貯金や不動産と同様に、相続税申告の対象です。
申告せずに相続人間で分配してしまうと、後日税務調査で発覚した際に、過少申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
また、遺産分割協議後に発見された場合は、原則として協議のやり直しが必要となります。
さらに、相続税の申告・納税がすでに完了している場合には、修正申告が必要になることもあります。
このような事態を避けるためにも、遺品整理の段階で、現金や通帳、金庫などについては重点的に確認することが重要です。
結論
タンス預金は、安心のために保管されていたはずの現金が、結果として大きなリスクを生むことがあります。
生前であれば資産管理や贈与計画の見直し、相続の場面では申告漏れ防止と相続人間の公平性確保が重要になります。
遺品整理は単なる片付けではなく、相続手続きの一部です。
タンス預金を含む「見えにくい財産」への目配りが、無用なトラブルや税務リスクを防ぐことにつながります。
参考
・日本銀行「資金循環統計(2025年第2四半期)」
・日本FP協会 相続・贈与に関する解説資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

