高齢期に入ると、「自分がどの不動産を持っているのか」「相続人にきちんと引き継げるのか」といった不安を感じる方は少なくありません。
特に、若い頃に取得した土地や、相続で受け継いだまま利用していない不動産については、記憶が曖昧になっているケースもあります。
令和8年2月2日から始まる所有不動産記録証明制度は、こうした年金世代・高齢者の不安を軽減し、相続や資産管理を現実的に進めるための有力な手段となります。
自分の不動産を「一覧で確認できる」安心感
年金世代にとって最大のメリットは、自分が所有する不動産を一覧で把握できる点です。
これまで、不動産を確認するには、権利証を探したり、心当たりのある土地について個別に登記簿を取得したりする必要がありました。
そのため、「どこに何を持っているのか分からないまま」という状態が生じやすかったといえます。
所有不動産記録証明制度を利用すれば、一定の条件のもとで、自身が登記名義人となっている不動産をまとめて確認することができます。
これは、老後の資産管理において、大きな心理的安心につながります。
相続人に「迷惑をかけない」準備ができる
高齢者の多くが気にするのが、「相続人に手間をかけさせたくない」という点です。
相続発生後に不動産が見つからず、相続人が全国の法務局を調べ回るといった事態は、現実に起きています。
不動産の見落としは、相続登記未了や将来のトラブルの原因にもなります。
生前に所有不動産記録証明制度を活用し、不動産の一覧を確認・整理しておけば、相続人にとって大きな負担軽減となります。
「何があるのか分からない相続」から「見通しの立つ相続」へ変える効果があります。
生前整理・終活の具体的なツールになる
終活という言葉が一般化する中で、財産の整理は重要なテーマになっています。
所有不動産記録証明制度は、終活を抽象的な話で終わらせず、具体的な行動に落とし込むための道具としても有効です。
不動産の存在を正確に把握することで、
- 売却する不動産
- 子に生前贈与する不動産
- 相続で残す不動産
といった判断を現実的に検討できるようになります。
特に、利用予定のない土地や遠方の不動産については、早めに方針を決めるきっかけになります。
認知機能低下リスクへの備え
年齢を重ねるにつれ、判断力や記憶力の低下リスクは誰にでもあります。
不動産の把握が本人しか分からない状態のままでは、将来、家族が対応に困る可能性があります。
所有不動産記録証明制度を活用し、元気なうちに不動産の全体像を明らかにしておくことは、将来への備えとしても有効です。
成年後見制度や家族信託を検討する際の基礎資料としても活用しやすくなります。
住所・氏名変更登記を見直すきっかけになる
本制度は、登記簿上の氏名・住所と検索条件が一致していなければ、不動産が抽出されません。
この仕組みは、年金世代にとって重要な気づきを与えます。
長年の引越しや結婚・離婚などで、登記情報が古いままになっているケースは珍しくありません。
令和8年4月1日からは、住所・氏名変更登記の義務化も始まります。
所有不動産記録証明制度の利用は、登記情報を見直し、将来の過料リスクや相続時の混乱を防ぐ行動につながります。
結論
所有不動産記録証明制度は、相続人のための制度であると同時に、年金世代・高齢者自身の安心のための制度でもあります。
不動産を一覧で把握し、相続や老後の備えを具体化することは、「何も起きていない今」だからこそ可能です。
相続登記義務化や変更登記義務化とあわせて考えると、不動産を放置しない姿勢が、これからの高齢期のスタンダードになっていくといえるでしょう。
参考
- 税のしるべ「2月2日から所有不動産記録証明制度がスタート、被相続人が所有する全国の不動産の把握が可能に」(2026年1月26日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
