実際の事例から学ぶ① ― 売却か?賃貸か?

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

日本の空き家問題と対策(第3回)

空き家問題をめぐるニュースを耳にしても、「自分にはまだ関係ない」と思う方も多いかもしれません。しかし、親の介護や相続といった出来事をきっかけに、突然「空き家をどうするか?」という選択を迫られるケースは少なくありません。

実際の相談例を見てみると、空き家の行方は「売却」「賃貸」「活用」のどれを選ぶかで大きく変わります。今回は典型的な2つの事例を紹介し、そこから見えてくるポイントを整理してみましょう。


事例1:高齢の母を呼び寄せた結果、実家が空き家に

状況
70代の母親を都市部に呼び寄せて一緒に暮らすことに。地方にある実家は空き家となり、残置物も多く片付けが進まない。固定資産税の負担は軽いが、草木が伸び、老朽化が心配になってきた。

対応策

  • 不用品を処分し、建物を最低限の状態まで整える。
  • 借り手が自由に改修できる「DIY賃貸」として募集。
  • 賃料は相場より安いが、修繕費用を借主に任せられるため、所有者の負担は少ない。

結果
借り手がリフォームを行い、住居として再生。人が住むことで管理も行き届き、所有者の心理的な負担も軽減された。

学び

  • 「壊す」か「売る」しかないと思われがちだが、賃貸という選択肢もある。
  • DIY賃貸のように、コストを抑えつつ人の手で再生してもらう方法もある。
  • 地域のニーズに合わせた柔軟な工夫が有効。

事例2:相続した家が安くしか売れない…

状況
親から地方の戸建て住宅を相続。地元の不動産会社に査定してもらったところ、周辺相場よりも安い金額しか提示されなかった。複数の相続人がいて話し合いも進まず、結論が出ないまま時間だけが過ぎていた。

対応策

  • 相続人の一人が家を取得し、他の相続人に代償金を支払う形で合意。
  • その後、不動産会社を通じて売却活動を実施。
  • 結果、当初の査定額より高い条件で買い手が見つかり、相続人間のトラブルも回避できた。

結果
「安くしか売れない」という思い込みから一歩踏み出し、調整を重ねたことで円満解決に。

学び

  • 相続人間の調整次第で、不動産の扱い方は大きく変わる。
  • 複数の業者に相談したり、売却方法を工夫したりすれば条件が改善する場合もある。
  • 「相続だから難しい」と諦める前に、取れる選択肢を探すことが大切。

事例から見えてくる共通点

  1. 「放置」が一番リスクを高める
    時間が経てば経つほど老朽化し、価値も下がり、売るのも貸すのも難しくなる。
  2. 選択肢は一つではない
    売却・賃貸・活用と複数の可能性を比べることで、自分の状況に合った方法が見つかる。
  3. 行動の早さがカギ
    相続や同居のタイミングで動けば、解決策の幅は広がる。先送りすると「管理不全空き家」に指定されるリスクもある。

空き家活用の広がる可能性

近年は、空き家を単なる「負担」ではなく「地域資源」として活用する動きも広がっています。

  • シェアハウスや学生寮
  • 子育て世帯向け住宅
  • テレワーク拠点や移住者向け住宅

事例1のDIY賃貸のように、所有者の発想と地域ニーズが合致すれば、新しい形で生まれ変わることができるのです。


私たちができること

これらの事例から学べるのは、空き家を「どう扱うか」を早めに決めることの重要性です。

  • 売却に踏み切るなら、複数業者に相談して納得できる条件を探す。
  • 賃貸にするなら、DIY賃貸や定期借家契約など柔軟な形を検討する。
  • いずれにしても「放置」だけは避ける。

実際に事例に触れると、空き家は工夫次第で「負担」から「資産」へと変わることが見えてきます。


おわりに

空き家の行方を左右するのは、所有者や家族の判断次第です。事例1と事例2は異なるケースですが、どちらも「動いたことで解決につながった」という共通点があります。

次回(第4回)はさらに踏み込み、「住みたいけれど資金が足りない」「施設入所で家を管理できない」といった事例を紹介します。空き家と老後資金、介護といったテーマがどう関わるのかを考えていきましょう。


📌 参考資料:FPジャーナル 2025年4月号「日本の空き家の現況と対策」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました