令和8年度税制改正大綱では、暗号資産取引を巡る税制について、大きな転換点となる見直しが盛り込まれました。
注目されているのは、暗号資産取引から生じる所得への分離課税の導入ですが、同時に消費税の取扱いについても重要な整理が行われています。
分離課税の導入によって、暗号資産が金融商品として制度的に位置付けられる流れが明確になる一方、消費税実務ではこれまで曖昧さや不均衡が指摘されてきました。
今回の改正は、その歪みを是正する意味合いを持つものといえます。
本記事では、分離課税導入とあわせて行われる消費税の見直しについて、実務視点で整理します。
暗号資産の譲渡は引き続き消費税非課税
まず確認しておきたいのは、分離課税が導入された後も、暗号資産の譲渡そのものは消費税非課税とされる点です。
現行制度では、暗号資産は消費税法上、支払手段およびこれに類するものとして整理され、その譲渡は非課税取引とされています。
今回の改正では、この位置付けが有価証券に類するものへと変更されますが、非課税である点自体は維持されます。
そのため、暗号資産の売却や交換に対して、新たに消費税が課されるわけではありません。
課税売上割合の算定方法が変更される
今回の改正で実務への影響が最も大きいのが、課税売上割合の算定方法です。
現行制度では、暗号資産の譲渡は非課税売上であるものの、課税売上割合の計算においては、非課税売上高にも含めずに扱われています。
その結果、暗号資産取引が多い事業者ほど、課税売上割合が高く算定され、仕入税額控除が相対的に大きくなる構造が生じていました。
令和8年度税制改正では、暗号資産の譲渡について、その譲渡対価の5パーセント相当額を「資産の譲渡等の対価」として、課税売上割合の計算に算入する仕組みに変更されます。
これは、有価証券取引と同様の考え方を暗号資産にも適用するものであり、課税売上割合を実態に近づける調整といえます。
暗号資産の貸付けは非課税へ
もう一つ重要な見直しが、暗号資産の貸付けに関する消費税の取扱いです。
現行制度では、暗号資産の貸付けに伴う利用料は、消費税の課税対象とされています。
暗号資産交換業者の利用規約に基づき、同種・同等の暗号資産が返還され、利用料が支払われる取引は、消費税法上「資産の貸付け」に該当すると整理されてきました。
しかし、支払手段の譲渡や金銭の貸付け、有価証券の貸付けのいずれにも該当しないため、消費税の課税対象とされていた点に違和感を持つ実務家も少なくありませんでした。
今回の改正では、暗号資産の貸付けについても消費税非課税とする措置が講じられます。
これにより、レンディングなど暗号資産特有の取引形態についても、消費税上の整合性が一定程度確保されることになります。
改正の適用時期
これらの改正は、分離課税の導入と同様、今後国会に提出される金融商品取引法の改正案の施行日と連動して適用される予定です。
具体的には、改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後に行われる暗号資産の譲渡等から適用される見込みです。
分離課税と消費税の見直しは同時に動く可能性が高く、制度移行期の整理が実務上の重要なポイントになります。
結論
令和8年度税制改正大綱における暗号資産税制の見直しは、暗号資産を金融商品として制度的に整理する方向性を明確に示しています。
分離課税の導入によって所得税の扱いが整理される一方、消費税についても、非課税を維持しつつ課税売上割合の算定方法を見直すことで、これまでの実務上の不均衡を是正する仕組みが導入されます。
暗号資産を事業として取り扱う事業者にとっては、消費税の影響は見過ごせない論点です。
今後の法案審議や政省令の内容を注視しながら、早めに実務対応を検討しておくことが重要といえるでしょう。
参考
税のしるべ 2026年1月19日号
暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)
令和8年度税制改正大綱
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
