食品消費税ゼロは「生活支援」か、それとも「選挙対策」か――衆院解散と消費減税論争を冷静に読み解く

FP

2026年1月、高市首相は通常国会冒頭での衆院解散を表明し、2月8日投開票の総選挙に踏み切りました。最大の争点として浮上しているのが、食品を対象とした消費税率ゼロです。
物価高が続く中、生活支援としての減税を求める声は根強く、与野党が足並みをそろえるかのように「食品消費税ゼロ」を掲げる構図となりました。しかし、この政策は本当に家計を守る処方箋なのでしょうか。財源、経済効果、そして将来世代への影響を含めて整理してみます。

1.異例のタイミングで行われた衆院解散

今回の衆院解散は、通常国会の冒頭という点でも、解散から投開票まで16日間という短さでも、極めて異例です。本来であれば最優先されるべき2026年度予算案の審議は選挙後に持ち越され、暫定予算編成の可能性まで示唆されました。
首相は「政治の安定なくして改革は進まない」と説明しましたが、国民生活に直結する予算を後回しにしてまで解散に踏み切る合理性については、評価が分かれています。

2.食品消費税ゼロに年間5兆円の代償

食品の消費税をゼロにすると、年間で約5兆円の税収減になるとされています。これは一時的な金額ではなく、2年間続ければ累計で10兆円規模になります。
政府は赤字国債に頼らないとしていますが、具体的な財源は「歳出歳入全般の見直し」といった抽象的な説明にとどまっています。社会保障を支える安定財源である消費税に大きな穴を開ける以上、極めて慎重な設計が必要です。

3.軽減税率と「ゼロ税率」は別物

現在の軽減税率は、消費税の逆進性を緩和するために導入された制度です。一方で「ゼロ税率」は、税率を下げるのではなく、課税対象から外すという点で性格が異なります。
ゼロ税率は価格を直接押し下げる効果がある一方で、高所得者ほど消費額が大きく、恩恵も大きくなります。本当に支援が必要な層に的を絞れているかという点では、疑問が残ります。

4.中道改革連合の「恒久ゼロ」という選択

立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合は、食品消費税ゼロを恒久措置とする方針を打ち出しました。政府系ファンドの創設などを財源案として示していますが、毎年5兆円規模の安定財源を確保できるかは不透明です。
恒久減税である以上、景気対策ではなく制度改革になります。その覚悟と具体性が問われます。

5.経済効果は限定的、リスクは中長期

民間エコノミストの試算では、食品消費税ゼロによる実質GDP押し上げ効果は初年度で0.2%程度にとどまり、2年目以降はほぼ効果が消えるとされています。
一方で、財政への不安が高まれば、金利上昇や円安を通じて輸入物価が上昇し、家計の負担はむしろ増える可能性があります。短期の安心感と引き換えに、中長期の不安定さを招くリスクは無視できません。

6.本来議論すべき選択肢

消費税減税に代わる手段として、給付付き税額控除のように、低所得者層に直接的に支援を届ける制度があります。また、物価高の背景にある供給制約や成長力の低下に目を向け、投資や生産性向上をどう進めるかという議論も不可欠です。
選挙の争点が減税一色になることで、こうした本質的な議論が置き去りにされている点は、強く懸念されます。

結論

食品消費税ゼロは、分かりやすく、即効性のある政策に見えます。しかし、その裏側には巨額の財源問題と、将来世代への負担という重い課題があります。
今回の衆院選は、単なる減税の是非を問う選挙ではなく、「どのような形で生活者を支え、どのような財政と経済を次世代に残すのか」を選択する機会でもあります。目先の負担軽減だけでなく、持続可能性という視点から各党の公約を見極める必要があります。

参考

・日本経済新聞「衆院選、来月8日投開票 首相『23日解散、積極財政問う』」
・日本経済新聞「中道、食品消費税ゼロ『恒久に』 基本政策で5本柱」
・日本経済新聞「消費減税、展望なき横並び 『食品ゼロ』なら年5兆円税収減」
・日本経済新聞「食品の軽減税率 低所得者層の負担抑制」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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