宿泊税の定率制・定額制が広がる中、
インボイス表示と並んで実務で迷いやすいのが「会計処理」です。
特に悩ましいのは、
- 宿泊税は売上に含めるのか
- 預り金で処理すべきか
- 租税公課にしてよいのか
という点です。
本稿では、宿泊税の性質を踏まえたうえで、
会計ソフトでの代表的な仕訳例を整理します。
宿泊税の会計処理の基本的な考え方
宿泊税は、宿泊事業者が最終的に負担する税ではなく、
宿泊者から預かり自治体に納付する税金です。
このため、会計上は原則として
収益(売上)にも費用(損金)にもなりません。
実務では、次のいずれかの処理が採られます。
- 預り金処理(最も一般的)
- 租税公課処理(簡便処理として行われることがある)
それぞれの考え方と仕訳を見ていきます。
仕訳例① 預り金処理(原則的な処理)
最も理論的に整合性があるのが「預り金」での処理です。
前提条件(定額制)
- 宿泊料金:20,000円
- 消費税(10%):2,000円
- 宿泊税:200円
宿泊者から料金を受け取ったとき
(借方)現金・預金 22,200
(貸方)売上高 20,000
(貸方)仮受消費税 2,000
(貸方)預り金 200
自治体へ宿泊税を納付したとき
(借方)預り金 200
(貸方)現金・預金 200
ポイント
- 売上高・消費税とは完全に切り分けられる
- 消費税申告書との整合性が取りやすい
- 税務調査でも説明しやすい
特に定率制で金額が大きくなる場合は、
この処理が最も安全です。
仕訳例② 定率制の場合の預り金処理
定率制でも考え方は同じです。
前提条件
- 宿泊料金:50,000円
- 消費税(10%):5,000円
- 宿泊税(3%):1,500円
受領時の仕訳
(借方)現金・預金 56,500
(貸方)売上高 50,000
(貸方)仮受消費税 5,000
(貸方)預り金 1,500
納付時の仕訳
(借方)預り金 1,500
(貸方)現金・預金 1,500
注意点
- 宿泊税を「課税売上」に含めない
- 消費税の仮受額と混在させない
仕訳例③ 租税公課処理(簡便的な処理)
実務では、宿泊税をいったん費用(租税公課)として処理し、
納付時にそのまま支出するケースも見られます。
納付時の仕訳例
(借方)租税公課 200
(貸方)現金・預金 200
この処理の位置づけ
- 簡便だが理論的には厳密ではない
- 金額が少額な場合に実務上容認されることがある
- 定率制で高額になると不適切になりやすい
特に、宿泊税収が大きくなる場合、
費用計上すると利益が不自然に圧縮されるため注意が必要です。
預り金と租税公課、どちらを選ぶべきか
判断の目安は次のとおりです。
- 定率制・高額宿泊が多い
→ 預り金処理が望ましい - 定額制・少額・事務簡便を重視
→ 租税公課処理も実務上あり得る
ただし、インボイス制度・消費税申告との整合性を考えると、
原則は預り金処理と整理しておく方が安全です。
会計ソフト設定時の注意点
会計ソフトでは、次の点を確認しておく必要があります。
- 「預り金」科目を消費税区分「対象外」に設定
- 売上科目に宿泊税が混ざらないよう補助科目を分ける
- 消費税レポートで課税売上に含まれていないか確認
定率制導入後は、初年度にここでミスが出やすくなります。
結論
宿泊税は、会計上は「事業者の収益でも費用でもない税」です。
その性質を素直に反映すると、
預り金処理が最も整合的な方法になります。
定率制が広がる今後は、
仕訳の正確さが消費税申告や税務調査対応に直結します。
会計ソフトの設定と処理ルールを、
一度きちんと見直しておくことが重要です。
参考
・日本経済新聞「宿泊税に『定率制』台頭」
・国税庁 消費税法関係資料
・総務省 地方税制度に関する解説
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
