「食品消費税ゼロ」という言葉が広がる中で、
事業者の間では「非課税になるのと何が違うのか」という疑問が多く聞かれます。
ゼロ税率と非課税は、いずれも消費税を負担しない点では共通しますが、
制度上・実務上の扱いはまったく異なります。
本稿では、インボイス制度との関係も踏まえながら、
ゼロ税率と非課税の違いを整理します。
ゼロ税率とは何か
ゼロ税率とは、
課税取引であることを前提に、税率だけを0%とする仕組みです。
取引の性質は「課税」のままであり、
- 課税売上に含まれる
- 消費税の申告対象になる
という点が重要です。
食品消費税ゼロが導入される場合、
多くの場合はこの「ゼロ税率」として整理される可能性が高いと考えられます。
非課税とは何か
非課税取引とは、
そもそも消費税の課税対象に含めない取引を指します。
代表的な非課税取引には、次のようなものがあります。
- 土地の譲渡・貸付
- 住宅の家賃
- 医療・介護サービス
- 学校の授業料
これらは、政策的・社会的配慮から、
消費税を課さないと明確に定められています。
最大の違いは「課税取引かどうか」
ゼロ税率と非課税の最大の違いは、
課税取引に含まれるか否かです。
- ゼロ税率:課税取引
- 非課税:課税取引ではない
この違いが、
インボイス制度や申告実務に大きく影響します。
インボイス制度との関係の違い
ゼロ税率の場合、
課税取引であるため、インボイス制度の対象になります。
つまり、
- 適格請求書の発行が必要
- 税率欄には「0%」と記載
- 消費税額は「0円」と表示
といった対応が求められます。
一方、非課税取引は、
そもそも消費税の課税対象外であるため、
- インボイスの記載対象外
- 税率や税額の記載は不要
となります。
仕入税額控除への影響の違い
ここが、実務上とくに重要なポイントです。
ゼロ税率の場合、
- 課税仕入として扱われる
- 仕入税額控除の対象になる(ただし税額は0円)
という位置づけになります。
一方、非課税仕入の場合、
- 課税仕入に含まれない
- 仕入税額控除の対象外
となります。
この違いは、
課税売上割合の計算や、簡易課税・本則課税の判断にも影響します。
売上区分・帳簿管理への影響
ゼロ税率取引は、
- 課税売上(税率0%)
- 軽減税率8%
- 標準税率10%
と並列で管理する必要があります。
一方、非課税売上は、
- 課税売上とは別枠
- 課税売上割合の分母・分子に影響
するため、
帳簿上の区分管理の意味合いが異なります。
「食品ゼロ」は非課税にならない理由
食品消費税ゼロが、
非課税ではなくゼロ税率とされる理由は明確です。
もし非課税とすると、
- 課税売上割合が下がる
- 仕入税額控除が制限される
- 事業者間で不公平が生じる
といった問題が生じます。
このため、政策的に消費者負担を軽減する場合でも、
制度上は「ゼロ税率」が選ばれるのが一般的です。
結論
ゼロ税率と非課税は、
「税金がかからない」という見た目は似ていますが、
制度上は正反対の位置づけにあります。
- ゼロ税率:課税取引、インボイス対象
- 非課税:課税対象外、インボイス対象外
食品消費税ゼロが議論される中で、
事業者としては「非課税になる」と誤解しないことが重要です。
今後の制度変更を見据えるうえでも、
この違いを正確に理解しておくことが、実務対応の第一歩となります。
参考
・消費税法
・消費税法基本通達
・国税庁 インボイス制度関係資料
・日本経済新聞 政治・税制関連記事
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
