老後のお金が不足する原因は、
「資産が少なかったから」だけではありません。
実際には、取り崩し方を間違えた結果、資産寿命を縮めてしまうケースが非常に多く見られます。
年金、分配金、預貯金、投資資産。
これらをどう使うかには、明確な「やってはいけない型」が存在します。
本稿では、老後の資産管理において避けるべき代表的な取り崩しパターンを整理し、
なぜそれが危険なのかを構造的に解説します。
パターン① 「預貯金から先に使い切る」
老後によく見られるのが、
「投資は怖いから、まずは現金から使う」
という判断です。
一見すると安全そうですが、これは危険な取り崩し方です。
預貯金を先に使い切ると、
・残るのは価格変動のある資産だけ
・相場が悪い年でも売却せざるを得ない
という状況に追い込まれます。
結果として、
最も不安定な時期に、最も不安定な資産だけが残る
という逆転現象が起きます。
パターン② NISAを早く使い切ってしまう
非課税だから、使いやすい。
この理由で、NISA資産を老後早期に取り崩してしまうケースも少なくありません。
しかし、NISAは
・税金がかからない
・年金・保険料判定に影響しにくい
という、老後に最も価値の高い「調整弁」です。
これを早く使い切ってしまうと、
後半は
・課税口座の売却
・課税される分配金
だけで生活することになり、
手取りが年々減っていきます。
パターン③ iDeCoを「早めに全額受け取る」
退職時に、
「せっかくだからiDeCoもまとめて受け取ろう」
と考える人もいます。
しかし、iDeCoは
時間をかけて受け取るほど税制上有利になる資産です。
一時金でまとめて受け取ると、
・退職所得控除を使い切れない
・他の退職金と重なり課税が増える
といった事態が起きやすくなります。
本来は「最後まで残す資産」を、
最初に使ってしまう典型例です。
パターン④ 分配金をすべて生活費に組み込む
REITなどの分配金を、
「毎年これだけ入るから大丈夫」
と固定収入のように扱うのも危険です。
分配金は、
・景気
・金利
・不動産市況
によって変動します。
これを生活費の前提にしてしまうと、
分配金が減った年に
・急な取り崩し
・生活水準の引き下げ
を迫られます。
分配金は
あくまで余力、生活の補助
として扱う必要があります。
パターン⑤ 毎年「同じ額」を機械的に取り崩す
「毎年○万円ずつ取り崩す」と決めてしまうのも、
一見合理的で、実はリスクの高い方法です。
相場が悪い年でも同額を取り崩すと、
・安値で売却する
・回復前に資産を減らす
という悪循環に陥ります。
老後の取り崩しは、
金額固定ではなく、状況対応型
であるべきです。
パターン⑥ 税金・保険料を意識しない取り崩し
老後は所得税よりも、
住民税・医療保険料の影響が大きくなります。
・売却益
・分配金
・年金
が同じ年に集中すると、
翌年の保険料が大きく上がることがあります。
「税金は引かれていないはずなのに、手取りが減った」
という違和感の正体は、ここにあります。
パターン⑦ 「増やす運用」をやめてしまう
老後=運用終了
と考えてしまうのも、よくある失敗です。
老後期間は、
20年、30年に及ぶ可能性があります。
この期間、すべてを現金で持つことは、
インフレに対して無防備になります。
老後こそ、
減らしすぎないための運用
が必要です。
結論
老後にやってはいけない取り崩し方には、共通点があります。
・短期の安心を優先する
・税制の価値を軽視する
・変動を前提にしない
老後の資産管理で重要なのは、
「失敗しないこと」です。
資産を増やすより、
使い方を間違えないこと
の方が、結果に与える影響は大きくなります。
取り崩しは技術です。
正しい順序と設計があれば、老後のお金は十分にコントロールできます。
参考
・日本経済新聞 年金・資産運用関連記事
・国税庁 年金・配当・退職所得の課税関係資料
・金融機関・FP向け老後資産管理資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
