年金受給が始まると、資産運用のフェーズは「積み立て」から「取り崩し」へと移ります。
このとき多くの人が悩むのが、
・どの資産から使うべきか
・税金はどのタイミングで発生するのか
・順番を間違えると損をしないか
という点です。
老後の資産管理では、運用利回り以上に「取り崩しの順序」が重要になります。
本稿では、年金受給開始後における資産の取り崩し順序を、税制との関係から整理します。
老後資産は「3つの箱」で考える
取り崩し順序を考える前に、老後資産を次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
1つ目は、非課税で使える資産です。
NISA口座内の資産がこれに当たります。売却益・分配金ともに非課税で、税金を気にせず使えます。
2つ目は、課税されるがコントロール可能な資産です。
課税口座の投資信託、株式、REITなどが該当します。
3つ目は、受け取り時に課税関係が決まる資産です。
iDeCoが典型例で、年金か一時金かによって課税のされ方が変わります。
この3分類が、取り崩し順序を考える基本となります。
基本となる取り崩し順序の考え方
一般的に考えやすい取り崩し順序は、次の流れです。
① 課税口座 → ② NISA口座 → ③ iDeCo
この順番には、税制上の理由があります。
① 課税口座から取り崩す理由
課税口座の資産は、保有している限り、
・分配金
・配当
・売却益
が課税対象になります。
特に年金受給期では、
年金+分配金+売却益
が合算されることで、住民税や社会保険料に影響が出やすくなります。
そのため、
課税され続ける資産は、早めに整理する
という考え方が合理的です。
また、価格変動のある資産を先に使うことで、
将来の相場変動リスクを減らす効果もあります。
② NISA口座は「後ろ倒し」が基本
NISA口座の最大の特徴は、
いつ使っても税金がかからない
という点です。
そのため、
・年金額が少ない年
・医療費などで支出が増えた年
・相場が下落して他の資産を売りにくい年
に柔軟に使える「調整弁」としての価値があります。
税制面から見ると、
NISA資産は急いで使う理由がありません。
むしろ後半まで残しておくことで、老後の安心感が高まります。
③ iDeCoは「最後まで温存」が原則
iDeCoは、
・運用中は非課税
・受取時に課税
という仕組みです。
受取方法によって、
・一時金 → 退職所得
・年金 → 雑所得
として課税されますが、いずれも控除制度があります。
重要なのは、
iDeCoは時間をかけて受け取るほど税制上有利になりやすい
という点です。
そのため、
・年金受給開始直後に全額使う
・他の資産があるのに先に取り崩す
必要性は低く、基本的には最後まで温存する資産と整理できます。
REIT分配金が取り崩し順序に与える影響
ここでREITの分配金をどう扱うかが重要になります。
REIT分配金は、
・課税口座では課税対象
・NISA口座では非課税
です。
年金受給開始後は、
「売って取り崩す」より「受け取って使う」
という形の方が、心理的にも実務的にも楽になります。
特にNISA内のREIT分配金は、
税金・保険料に影響しにくいキャッシュフロー
として、生活費の一部を静かに支える役割を果たします。
取り崩し順序を誤った場合の典型例
順序を意識しない場合、次のような事態が起こりやすくなります。
・NISAを先に使い切り、後半に課税口座だけが残る
・iDeCoを早期に受け取り、控除を十分に使えない
・分配金と年金が重なり、住民税や保険料が上がる
これらは、税制の仕組みを知らないことによる損失と言えます。
結論
年金受給開始後の資産管理で重要なのは、
「どれくらい使うか」よりも
「どこから使うか」です。
整理すると、
・課税口座は早めに整理
・NISAは柔軟な調整弁として後半まで温存
・iDeCoは最も長く残す資産
という順序が、税制と相性の良い基本形になります。
REIT分配金は、この取り崩し戦略の中で、
売却を減らし、税負担を平準化する役割
を担います。
老後のお金は、運用成績よりも設計の差が結果を分けます。
取り崩し順序を意識することは、資産寿命を延ばす最も確実な方法の一つです。
参考
・日本経済新聞 各種資産運用関連記事
・国税庁 年金・退職所得の課税関係資料
・金融機関・運用会社の老後資産管理資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
