税務調査において、家事関連費や家事按分が否認されるかどうかは、「何%で按分しているか」よりも、「どのように説明しているか」によって左右される場面が少なくありません。
同じ実態であっても、説明の仕方次第で評価が大きく変わるのが、この分野の特徴です。
本稿では、科目別に、税務調査で実際に想定される質問に対するNG例とOK例を対比しながら、実務で意識すべき説明のポイントを整理します。
水道光熱費
想定される質問
なぜ水道光熱費をこの割合で家事按分しているのですか。
NG例
自宅で仕事をしているので、だいたい半分くらいは仕事用だと思います。前年も同じ割合だったので、今年も同じにしました。
NGとされやすい理由
感覚的な説明にとどまっており、業務使用部分を裏付ける具体性がありません。また、前年踏襲のみを理由とする説明は合理性を欠くと判断されやすくなります。
OK例
自宅全体のうち、約20㎡を事務スペースとして常時使用しています。自宅全体の床面積は80㎡ですので、面積比で25%を業務使用割合としています。
この部屋は業務専用で、平日は1日おおむね8時間使用しており、生活用途では使用していません。
OKとされやすい理由
業務使用場所、使用状況、按分基準が具体的に説明されており、業務の遂行上必要な部分が明らかにされています。
通信費
想定される質問
この通信費は私用と業務用が混在しているようですが、どのように区分していますか。
NG例
仕事でも使っていますし、全部仕事に関係していると思っています。
NGとされやすい理由
私用と業務用の区別がされておらず、業務上必要な部分を明確に区分していない説明です。
OK例
スマートフォンは私用と業務用を兼ねていますが、業務上の連絡は主に平日の日中に行っています。
通話履歴と業務時間を基に、業務使用は全体のおおむね30%程度と判断し、その割合で按分しています。
OKとされやすい理由
業務時間帯や使用実態を踏まえた合理的な基準が示されており、按分割合の根拠が明確です。
地代家賃
想定される質問
自宅の家賃を経費にしていますが、業務使用の実態を説明してください。
NG例
家でも仕事をすることがあるので、家賃の一部を経費にしています。
NGとされやすい理由
「仕事をすることがある」という一時的・曖昧な使用状況では、業務の遂行上必要な部分とは認められにくくなります。
OK例
自宅の一室を事務所として使用しており、来客対応や資料保管もすべてこの部屋で行っています。
生活空間とは明確に分かれており、常時業務に使用しているため、使用面積比により家賃を按分しています。
OKとされやすい理由
継続性と専用性が説明されており、事業のための使用であることが明確です。
減価償却費
想定される質問
このパソコンの減価償却費は、なぜ一部を経費にしているのですか。
NG例
仕事にも使っていますし、私用か仕事用かはあまり区別していません。
NGとされやすい理由
使用実態が不明確で、業務使用割合を説明できていません。
OK例
このパソコンは業務資料作成や会計処理に使用しており、平日の業務時間中はほぼ業務専用で使用しています。
休日や夜間には私用で使用することもあるため、業務使用割合を70%として減価償却費を按分しています。
OKとされやすい理由
業務と私用の使用時間を踏まえた説明があり、業務使用部分が合理的に区分されています。
旅費交通費
想定される質問
この交通費はどの業務に関連するものですか。
NG例
外出したついでなので、細かい内容は覚えていません。
NGとされやすい理由
業務との直接的な関連性を説明できておらず、私的支出と区別できません。
OK例
この交通費は、○月○日に取引先との打ち合わせのために移動した際のものです。
移動先、打ち合わせ内容、業務目的は記録として残しています。
OKとされやすい理由
業務目的と支出内容が明確で、業務の遂行上直接必要であったことが説明されています。
接待交際費
想定される質問
この飲食代は、どのような業務目的で支出したものですか。
NG例
仕事関係の人と食事をしたので、接待交際費にしました。
NGとされやすい理由
相手方や業務目的が不明確で、私的な飲食との区別がついていません。
OK例
この支出は、○○業務の打ち合わせを目的として、取引先担当者と行ったものです。
業務内容や相手方については帳簿に記録しています。
OKとされやすい理由
業務目的・相手方・必要性が具体的に説明されています。
結論
家事関連費や家事按分に関する税務調査では、正しい割合かどうかよりも、合理的に説明できるかどうかが重視されます。
NG例に共通するのは、感覚的・抽象的な説明にとどまっている点です。
一方、OK例では、業務内容、使用実態、区分基準が具体的に示されています。
日頃から「なぜこの支出を経費にしているのか」を説明できる状態にしておくことが、調査対応における最大の備えとなります。
参考
・税のしるべ 2026年1月12日号
・所得税法第45条
・所得税法施行令第96条
・所得税基本通達45-1、45-2
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
