第2回では、円安と物価高が家計に与える影響を、現役世代と年金世代に分けて整理しました。
第3回では、その家計負担と深く結びつく税制と社会保障制度に焦点を当てます。円安は為替の問題にとどまらず、税負担の実質化、給付の目減り、年金の購買力低下を通じて、制度の効き方そのものを変えていきます。
円安と消費税:静かに進む実質増税
消費税は、物価に比例して税収が増える仕組みです。円安による輸入物価の上昇は、そのまま課税ベースの拡大につながります。
税率が変わらなくても、支払う消費税額は増えます。家計から見れば、これは名目税率を動かさない実質的な増税です。
特に影響が大きいのは、食料品やエネルギーなど、支出を削りにくい分野です。円安が続くほど、低所得層や年金世代ほど負担感が強まります。
給付・補助金政策の限界
物価高対策として給付金や補助金が打ち出されることがありますが、円安が続く環境では、その効果は限定的です。
一時的な給付は、その瞬間の家計を助けても、物価水準そのものを押し下げることはできません。
FPの視点では、給付を前提にした家計設計はリスクが高く、恒常的な生活コストの上昇をどう吸収するかが重要になります。
年金制度と円安:購買力の問題
公的年金は物価スライドがあるとはいえ、円安による輸入インフレを完全に吸収する仕組みではありません。
医療・介護・エネルギーといった分野は、円安の影響を受けやすく、年金の実質価値をじわじわと削ります。
年金額が増えても、生活実感が改善しない理由は、ここにあります。これは制度の欠陥というより、円安が続く前提で設計されていない制度であることの表れです。
年金課税と物価高のズレ
年金課税は、名目額を基準に課税されます。物価が上がっても、控除や課税区分が自動的に調整されるわけではありません。
結果として、実質的な生活水準が下がっているにもかかわらず、税負担が軽くならない、あるいは増えるケースも生じます。
これは現役世代の「名目賃金は上がったが、手取りが増えない」現象と本質的に同じ構造です。
円安と社会保険料負担
社会保険料もまた、物価高と密接に関係します。
名目賃金が上がれば、保険料負担は増えます。一方、物価高が円安起因である場合、実質賃金は改善しないまま、負担だけが増える可能性があります。
現役世代にとっては、税と社会保険料の「ダブル負担感」が強まる局面です。
給付付き税額控除との関係
物価高対策として議論される給付付き税額控除は、逆進性の緩和という点で一定の意義があります。
ただし、円安による輸入インフレが続く環境では、給付の原資は消費税を含む税収に依存します。
FPの視点では、制度設計以上に、「円安を前提にしない経済環境」をどう作るかが重要です。
税制と社会保障を機能させる前提条件
税制や社会保障は、本来、物価や賃金が安定的に推移することを前提に設計されています。
円安が長期化し、物価高が常態化すれば、制度は形式上維持されても、実質的な機能は低下します。
家計にとっては、「制度があるかどうか」よりも、「実際に生活を支えられるかどうか」が重要です。
結論
円安・物価高時代において、税制や社会保障は自動的に家計を守ってくれる存在ではありません。
消費税の実質負担、年金の購買力低下、社会保険料の負担感は、すべて円安と深く結びついています。
家計の努力だけでは吸収しきれない領域だからこそ、円安是正は税制・社会保障を機能させるための前提条件です。
次回は、こうした環境変化を踏まえ、ライフプラン全体をどう再設計すべきかを整理します。
参考
日本経済新聞
鶴光太郎「円安是正に真剣に向き合え」
大妻女子大学教授
2026年1月13日 朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
