円安・物価高時代の家計防衛― 現役世代と年金世代で異なる対応策 ―(シリーズ第2回)

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前回は、円安が単なる為替問題ではなく、家計・税制・資産管理にまで影響する構造的な問題であることを整理しました。
第2回では、円安と物価高が「家計管理」にどのような影響を与えるのか、そして現役世代と年金世代では何が異なるのかを、FP実務の視点から具体的に考えます。

円安・物価高は「一時的」ではない

家計相談の現場では、「そのうち物価は落ち着く」「円安も元に戻るだろう」という前提で支出構造を変えないケースが多く見られます。
しかし、円安を通じた物価上昇は、短期的なショックというよりも、生活コストの水準そのものを押し上げる性格を持ちます。
この変化を一時的と捉えるか、構造的と捉えるかで、家計防衛の方向性は大きく変わります。

現役世代の家計防衛①:支出構造の固定費化

現役世代にとって最大の課題は、「物価上昇に追いつかない可処分所得」です。
円安による物価高が続く局面では、変動費の節約だけでは限界があります。重要なのは、住居費、通信費、保険料といった固定費をいかに抑制するかです。
特に、住宅ローンや教育費が重なる世代では、金利上昇リスクと物価上昇リスクが同時に家計を圧迫します。円安・物価高を前提に、返済計画や貯蓄ペースの見直しが不可欠です。

現役世代の家計防衛②:インフレ耐性のある資産形成

円安局面では、現金の実質価値が低下します。現役世代にとって重要なのは、長期的に物価上昇に耐えられる資産形成です。
ただし、為替益を期待した外貨建て資産への過度な依存は避けるべきです。円安是正が進めば、評価額は簡単に変動します。
FP実務では、「通貨」「資産クラス」「時間」を分散させ、円安・円高のどちらにも耐えられる設計が基本となります。

年金世代の家計防衛①:支出の硬直化リスク

年金世代にとって、円安・物価高はより深刻です。収入が年金にほぼ固定されているため、支出増加を収入増で吸収できません。
公的年金には物価スライドがありますが、実際の生活費上昇、とりわけ食料品や光熱費の上昇を完全に補うものではありません。
結果として、医療・介護以外の支出を削る選択を迫られるケースが増えます。

年金世代の家計防衛②:資産取り崩し戦略の再設計

円安・物価高時代には、「貯める」よりも「どう取り崩すか」が重要になります。
物価が上昇する局面で定額取り崩しを続けると、実質的な生活水準は徐々に低下します。
FPの視点では、物価変動を意識した可変型の取り崩しや、生活費と予備費を分けた管理が不可欠です。

円安がもたらす“見えにくい老後リスク”

円安は、輸入医療機器や医薬品、エネルギー価格を通じて、将来の医療・介護コストにも影響します。
これは、現役世代にとっては「将来の老後リスク」、年金世代にとっては「現在進行形の生活リスク」です。
家計防衛とは、単なる節約ではなく、リスクの可視化と分散にあります。

家計防衛の前提としての円安是正

ここで重要なのは、家計の努力だけで円安・物価高を乗り切るには限界があるという点です。
円安是正は、家計防衛の“前提条件”であり、政策レベルでの対応がなければ、個人の努力は消耗戦になります。
FPとして家計に向き合う際も、「政策環境を前提にした現実的な設計」が欠かせません。

結論

円安・物価高時代の家計防衛は、世代によって対応が異なります。
現役世代は、固定費と資産形成の見直しを、年金世代は、支出管理と資産取り崩しの再設計を迫られます。
共通するのは、円安を前提とした家計設計には限界があるという認識です。
次回は、こうした家計負担と深く関わる税制・社会保障制度に焦点を当て、円安・物価高時代の制度的課題を整理します。

参考

日本経済新聞
鶴光太郎「円安是正に真剣に向き合え」
大妻女子大学教授
2026年1月13日 朝刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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