AI基本計画と高齢社会――高齢者を「支える対象」から「参加する主体」へ

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日本は世界でも例を見ないスピードで高齢化が進んでいます。一方で政府は、AIを社会全体に実装するための「AI基本計画」を打ち出し、行政、教育、医療、産業への活用を進めようとしています。
この二つは、別々の政策課題ではありません。AI基本計画は、高齢社会の設計思想そのものを問い直す契機でもあります。

本稿では、台湾の初代デジタル相である オードリー・タン 氏の議論も手がかりに、日本の高齢社会におけるAIの意味を考えます。

日本のAI基本計画が直面する現実

AI基本計画では、行政効率化や人手不足対策、生産性向上が強調されています。
背景にあるのは、労働人口の減少と財政制約です。高齢化が進む中で、従来の「人が支える仕組み」は限界に近づいています。

この文脈でAIは、しばしば「人の代替」として語られます。
しかしこの発想だけでは、高齢社会におけるAIの本質を捉えきれません。

高齢者はAIの「受益者」なのか

高齢社会政策では、無意識のうちに高齢者を「支援される存在」と位置づけがちです。
介護、医療、見守り、給付。確かに重要ですが、それだけでは社会参加の視点が欠けてしまいます。

AI基本計画が本当に目指すべきなのは、高齢者を「受益者」にとどめない設計です。
高齢者が意思を持ち、判断し、社会に関わり続けるための基盤としてAIを位置づける必要があります。

市民AIという視点

オードリー・タン氏が語る「市民AI」は、日本のAI基本計画に欠けがちな視点を補います。
市民AIとは、特定の企業や専門家のためのAIではなく、生活者一人ひとりの判断や参加を支える知能です。

この考え方は、高齢社会と極めて相性が良いものです。

たとえば、高齢者にとって複雑化する行政手続きや制度説明は、大きな障壁になっています。
市民AIが「制度の通訳者」として機能すれば、情報格差は大きく縮まります。

高齢社会におけるAIの役割転換

AIを「効率化の道具」としてのみ導入すると、高齢者は再び取り残されます。
一方で、AIを「伴走者」として設計すれば、役割は大きく変わります。

・行政手続きの理解を助ける
・医療や介護の選択肢を整理する
・学び直しや意見表明を支援する

こうした支援は、身体的な衰えを補うだけでなく、判断力と尊厳を守る役割を果たします。

α世代と高齢社会をつなぐAI基本計画

α世代は、AIと共存する感覚を自然に身につけています。
一方、高齢世代は、長年にわたる社会経験と合意形成の知恵を持っています。

AI基本計画がこの二つの世代を分断する方向に働くのか、それともつなぐのかは、設計次第です。
世代ごとに異なるUIや利用方法を前提にしつつ、同じ市民AI基盤を共有することができれば、世代間の断絶は緩和されます。

財政制約下での現実的な意味

高齢社会において、財政制約は避けられません。
だからこそ、AIによる支援は「コスト削減」だけでなく、「参加の維持」という視点で評価されるべきです。

社会参加が続くことで、孤立や重度化を防ぎ、結果として医療・介護コストの抑制にもつながります。
AI基本計画は、短期的な効率化と中長期的な社会安定の両立を目指す必要があります。

おわりに――AI基本計画は社会像を問う

AI基本計画は、技術政策ではありません。
どのような社会を維持し、誰を主体として位置づけるのかという、社会設計の問題です。

高齢社会においてAIが果たす役割は、人を置き換えることではなく、人が参加し続ける条件を整えることにあります。
AI基本計画が「高齢者をどう管理するか」ではなく、「高齢者とどう共に社会をつくるか」を問い続ける限り、日本の高齢社会は持続可能な形で進化していくはずです。


参考

日本経済新聞「〈α-20億人の未来〉α世代、AIと分断超越 新興国が先行の可能性」(2026年1月12日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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