都が割安住宅の容積率を緩和へ 家賃高騰時代の都市政策をどう読むか

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東京都心の住宅賃料は、この数年で明確な上昇基調に入っています。
共働き世帯や子育て世帯にとって、職住近接を維持したまま適正な家賃で住み続けることは年々難しくなっています。

こうした状況を受け、東京都は、民間による割安住宅の供給を促すため、マンションなどの容積率を緩和する新たな制度を2026年度にも導入する方針を示しました。
賃料を周辺相場の8割以下に抑えた住宅を整備した場合、延べ床面積を上乗せするという、国内では例の少ない仕組みです。

本稿では、この制度の仕組みと狙いを整理したうえで、住宅政策としての意味合いと今後の論点を考えてみます。

容積率緩和と割安住宅を結びつける新制度

容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合を指します。
都市部ではこの上限が厳しく定められており、開発事業者にとっては、容積率が事業採算を大きく左右します。

東京都が検討している新制度では、周辺相場よりも低い賃料で住宅を供給することを条件に、容積率の上乗せを認める点が特徴です。
例えば、敷地面積4000平方メートルの物件で容積率を100%緩和すれば、単純計算で延べ床面積は4000平方メートル増えます。
その増加分を活用して住戸数を増やせば、一部の住戸の賃料を抑えても、物件全体としては従来と同程度の収益を確保できる可能性があります。

つまり、家賃を下げることによる収益減を、床面積の増加で補うという発想です。
行政が直接家賃を規制するのではなく、民間の採算性を損なわない形で政策目的を達成しようとする点に、この制度の工夫があります。

同一敷地に限らない柔軟な設計

検討されている制度では、割安住宅を整備する場所と、容積率を緩和する対象物件が必ずしも同一である必要はありません。
同一エリア内で別の建物を新設したり、既存建物をリノベーションしたりする場合でも、容積率緩和の対象とする仕組みが検討されています。

この点は重要です。
都心部では、すでに建物が密集しており、同一敷地内で割安住宅をまとめて整備することが難しいケースも多くあります。
場所の柔軟性を持たせることで、制度の実効性を高めようとする意図がうかがえます。

子育て世帯流出を防ぐ都市政策の側面

今回の制度の背景には、子育て世帯の都外流出があります。
賃料の高騰により、通勤時間を犠牲にして郊外へ移らざるを得ない世帯が増えれば、都心の人口構成は偏り、都市としての持続性にも影響します。

割安住宅は、単なる住宅供給政策ではなく、
・職住近接の維持
・共働き世帯の時間的余裕の確保
・都市部での子育て環境の下支え
といった社会的な役割を担います。

市場原理だけに任せれば、高付加価値住宅や高額賃料物件に供給が偏りがちです。
今回の制度は、都市の人口構造そのものを意識した政策である点に特徴があります。

アフォーダブル住宅と官民連携ファンド

東京都は、民間任せにするだけでなく、自らもアフォーダブル住宅の供給に関与しています。
都が出資する官民連携ファンドを通じ、総額200億円規模の資金をアフォーダブル住宅に投じる計画も示されています。

容積率緩和という都市計画上の手法と、投資ファンドによる資金供給を組み合わせることで、
・供給量の確保
・長期的な事業継続性
の両立を図ろうとしています。

住宅政策が、都市計画・金融・民間投資を横断する領域に広がっていることを象徴する動きといえます。

今後の論点と注意点

もっとも、制度の実効性は今後の設計次第です。
割安とされる賃料水準の具体的基準、対象エリアの範囲、緩和幅の妥当性など、細部によって効果は大きく変わります。

また、
・一時的な賃料抑制にとどまらないか
・長期的に割安性を維持できる仕組みか
・周辺相場への影響はどうか
といった点も検証が必要です。

制度がうまく機能すれば、他の大都市や地方中核都市にも波及する可能性があります。

結論

東京都が検討する割安住宅と容積率緩和を組み合わせた新制度は、家賃高騰という構造的問題に対し、市場と政策をつなぐ一つの回答といえます。
家賃を直接規制するのではなく、民間の採算性を活かしながら住宅の選択肢を広げる点に特徴があります。

人口構造、子育て環境、都市の持続性をどう支えるのか。
今回の制度は、住宅政策が都市戦略そのものであることを改めて示しています。

参考

・日本経済新聞「都、割安住宅の容積率を緩和 民間に整備促す 子育て世帯流出防ぐ」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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