前回は、S&P500指数が年初に1%を超える上昇を記録したことを手がかりに、2026年相場の初動を整理しました。背景には、人工知能(AI)を軸とした成長期待と、金融政策への過度な悲観が後退している状況があります。
もっとも、「AI相場」と聞くと、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは半導体や巨大IT企業ではないでしょうか。しかし、2026年に向けて注目すべきなのは、AI投資の重心が徐々に広がり始めている点です。本稿では、AI相場の裾野拡大という視点から、今後の市場の読み方を整理します。
AI投資は「第2段階」に入った
生成AIの普及初期段階では、相場の関心は演算能力を担う半導体企業に集中していました。これは自然な流れです。AIの学習や推論には高性能な半導体が不可欠であり、設備投資の初期局面では最も恩恵を受けやすい分野だからです。
しかし、AIの実用化が進むにつれて、投資の焦点は次の段階へ移りつつあります。
それは、「AIを動かし続けるために必要な周辺インフラ」への投資です。
データセンター拡大が突きつける制約
AI向けデータセンターの増設は、計算能力だけでなく、膨大な電力と安定した稼働環境を必要とします。
この点が、従来のIT投資との大きな違いです。
データセンターが増えれば、
- 電力供給能力
- 送電網
- 冷却設備
といった物理的インフラがボトルネックになります。
その結果、AI投資の恩恵は半導体企業だけでなく、電力会社やエネルギー関連企業、さらには次世代電源の開発分野へと波及していきます。最近の市場で、電力・エネルギー関連銘柄が注目を集めているのは、この構造変化を反映した動きといえます。
「AI=ハイテク株」という思い込み
AI相場を語る際に注意したいのは、「AI=ハイテク株」という単純化です。
確かに、ソフトウェアや半導体は中核的な存在ですが、AIはそれ単体では完結しません。
AIは、
- 電力
- 記憶装置(ストレージ)
- 通信インフラ
- 安定した設備投資環境
と組み合わさって初めて価値を生みます。
つまり、AI相場とは「技術テーマ」であると同時に、「インフラ投資のテーマ」でもあるのです。この視点を持つことで、相場の見え方は大きく変わります。
裾野が広がる相場の特徴
投資テーマの裾野が広がる局面では、次のような特徴が見られます。
- 主役銘柄の上昇が一服する
- これまで目立たなかった分野に資金が向かう
- 相場全体としては底堅さを保つ
これは、バブル的な一極集中とは異なる動きです。
2026年のAI相場が、もしインフラやエネルギー分野を巻き込みながら進展していくのであれば、それはテーマの「成熟」を示しているとも考えられます。
個人投資家にとっての示唆
個人投資家の立場から見ると、AI相場の裾野拡大は二つの示唆を与えます。
一つ目は、「話題性のある銘柄」だけを追いかけるリスクです。
すでに大きく注目されている分野では、期待が株価に織り込まれている場合も少なくありません。
二つ目は、「相場テーマを構造で理解する」重要性です。
AIという言葉の裏側に、どのような設備やコスト、制約があるのかを考えることで、相場をより冷静に捉えることができます。
結論
2026年に向けたAI相場は、半導体中心の第1段階から、電力・インフラを含む第2段階へと移行しつつあります。
これは、AIブームが終わりに近づいているという意味ではなく、むしろ社会実装が進んでいることの表れです。
相場を見る際には、「どの企業がAIを作っているか」だけでなく、「AIを支える仕組みは何か」という視点を持つことが重要になります。
次回は、こうした成長期待と密接に関わる金融政策、特にFRBの利下げ期待と株式市場の関係について整理していきます。
参考
・日本経済新聞 米国株式市場関連記事
・日本経済新聞 AI・データセンター関連報道
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
