2025年の日本株市場では、日経平均株価が史上最高値を更新する局面が続きました。その背後で、これまで以上に存在感を高めているのが企業による自社株買いです。
東京証券取引所の投資部門別売買動向によれば、2025年に事業法人は10兆円を超える株式の買い越しとなり、日本株最大の買い手となりました。この数字は、日本株市場の構造が大きく変わりつつあることを示しています。
事業法人が最大の「買い手」になった意味
2025年通年で、事業法人は約10兆4700億円の買い越しを記録しました。これは前年に続く過去最高水準であり、単年ベースで見ても極めて大きな金額です。
かつて日本株市場では、海外投資家や個人投資家の売買が相場を左右する局面が多く見られました。しかし現在は、企業自身が株式市場の需給を支える主体になりつつあります。
その象徴的な例が、三菱商事による大規模な自社株買いです。2025年4月に最大1兆円規模の自社株買いを発表し、発行済み株式の約17%に相当する水準まで踏み込んだ点は、市場に強い印象を与えました。
自社株買いが増えた背景
自社株買いが拡大した背景として、いくつかの要因が考えられます。
第一に、株価下落局面での対応です。2025年は、いわゆる「トランプ関税ショック」による相場急落をきっかけに、決算発表シーズンで自社株買いを発表する企業が相次ぎました。経営陣にとって、株価が割安と判断される局面での自社株買いは、株主還元と株価下支えの両面で合理的な選択といえます。
第二に、企業の財務体質の変化です。日本企業は長年にわたり内部留保を積み上げてきましたが、近年は資本効率を重視する姿勢が強まっています。余剰資金を抱え込むよりも、自社株買いを通じて株主価値を高める判断が一般化してきました。
海外投資家と個人投資家の動き
2025年は、海外投資家も約5兆4000億円の買い越しとなり、日本株への資金流入が目立ちました。背景には、積極財政や成長戦略への期待、「日本が変わる」という評価があるとされています。
一方で、個人投資家は現物株を約3兆5000億円売り越しました。ただし、過去のアベノミクス初期と比べると売り越し額は小さく、極端な悲観が広がっている状況ではありません。
この構図から見えてくるのは、「企業と海外投資家が買い手となり、個人が利益確定を進める」という市場の役割分担です。企業の自社株買いがあることで、相場全体の下振れリスクが抑えられている側面もあります。
自社株買い相場の注意点
もっとも、自社株買いが万能というわけではありません。
株価の下支え効果は期待できる一方で、本業の成長が伴わなければ、いずれ株価評価は頭打ちになります。自社株買いはあくまで資本政策の一手段であり、企業価値の持続的向上には収益力や成長戦略が不可欠です。
投資家にとっては、「自社株買いをしているかどうか」だけでなく、「なぜその企業が今、自社株買いを行っているのか」を見極める視点が重要になります。
結論
2025年の10兆円超という自社株買いは、日本株市場における大きな転換点といえます。
企業が自ら株価を意識し、株主還元と資本効率を重視する姿勢を強めた結果、市場の需給構造は安定感を増しました。一方で、成長なき自社株買いには限界があることも忘れてはなりません。
今後の日本株を見るうえでは、企業の資本政策と成長戦略の両方を丁寧に読み解く姿勢が求められます。
参考
日本経済新聞
「企業、株買い越し10兆円超 昨年、自社株買い相次ぐ」
2026年1月9日朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

