妊婦健診の自己負担ゼロへ 全国一律「標準額」設定が意味するもの

FP

妊娠・出産をめぐる経済的負担は、これまで「自治体や医療機関によって大きく違う」という問題を抱えてきました。とりわけ妊婦健診は、出産までに複数回受ける必要があるにもかかわらず、公的医療保険の対象外とされ、自己負担が生じるケースが少なくありませんでした。
こうした状況を見直す動きとして、国は妊婦健診に全国一律の「標準額」を設定し、基準内の健診については自己負担をゼロにする制度改正に踏み出そうとしています。本記事では、この制度改正の内容と背景、そして家計や社会に与える影響について整理します。

妊婦健診とは何か

妊婦健診は、妊娠中の母体と胎児の健康状態を確認するために行われる重要な検査です。一般的には、血糖値や感染症の検査、超音波検査、子宮頸がん検診などを、出産までにおよそ14回に分けて実施します。
これらは医学的に必要性が高いものですが、公的医療保険の適用外とされてきました。そのため、国は「望ましい基準」を定め、その範囲内の健診については自治体が公費で負担する仕組みを整えてきました。

自治体・医療機関による大きなバラツキ

問題は、この公費負担の運用が自治体ごとに異なっている点です。実際、妊婦1人あたりの公費負担額には5万円以上の差があり、自己負担が発生している自治体は全国の約35%に上ります。
また、医療機関が自由に料金を設定できるため、国の基準内の健診であっても自己負担が生じるケースが少なくありません。調査では、約65%の医療機関で妊婦の自己負担が発生しており、なかには3万円以上の負担となる例も確認されています。
地域差も大きく、同じ妊婦健診でも住んでいる地域や通院先によって、支払う金額が大きく異なるのが現状でした。

全国一律「標準額」設定の内容

こうしたバラツキを是正するため、国は妊婦健診に全国一律の「標準額」を設定します。診療報酬などを参考に算定された標準額を示し、その範囲内の健診については、妊婦の自己負担をゼロとすることを目指します。
法改正により、医療機関や自治体に対しては、標準額を「勘案」して料金や補助額を設定する努力義務が課される予定です。あわせて、出産費用の無償化に向けた制度改正とも連動させ、2026年の通常国会での成立が目指されています。

基準外検査の可視化と選択の自由

一方で、医療機関によっては、国の基準を超えた独自の検査やサービスを提供しているケースもあります。例えば、胎児の3Dエコー検査などは医学的必須ではないものの、希望する妊婦も少なくありません。
今回の制度改正では、こうした基準外の自費検査やサービスを可視化し、妊婦が内容と費用を理解したうえで選択できる環境整備も重視されています。想定外の費用負担が生じないよう、事前説明の徹底が求められています。

情報公開の強化

さらに、国が運営する「出産なび」に妊婦健診の情報を追加し、医療機関ごとに自己負担の有無や金額の目安が分かるようにする方針です。
これにより、妊婦や家族が医療機関を選ぶ際に、費用面の不安を減らし、納得した選択がしやすくなることが期待されています。

結論

妊婦健診の自己負担ゼロ化は、単なる家計支援にとどまらず、妊娠・出産を社会全体で支える姿勢を明確にする政策といえます。全国一律の標準額設定によって、地域や医療機関による不公平感が和らぎ、安心して妊婦健診を受けられる環境が整うことが期待されます。
一方で、制度の実効性を高めるには、情報公開や説明責任の徹底が欠かせません。妊婦が「知らないうちに自己負担が発生していた」という状況をなくすことが、今後の重要な課題となるでしょう。

参考

・日本経済新聞「妊婦健診、自己負担ゼロに 国が一律『標準額』設定」
・こども家庭庁 母子保健施策に関する公表資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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