2026年1月、米国の代表的株価指数であるS&P500に連動する投資信託の運用残高が、ついに10兆円を超えました。
一つの公募投資信託としては初めての規模であり、日本の個人投資の歴史において一つの節目といえます。
背景には、2024年から始まった新NISA制度の定着と、長期化する物価上昇があります。
本記事では、S&P500連動投信がここまで拡大した理由を整理したうえで、この動きを私たちはどのように受け止め、資産形成にどう生かすべきかを考えていきます。
S&P500連動投信とは何か
S&P500は、米国を代表する約500社の大型株で構成される株価指数です。
アップル、マイクロソフト、アマゾンなど、世界経済を牽引する企業が数多く含まれています。
S&P500連動投信とは、この指数とほぼ同じ値動きを目指して運用されるインデックス型投資信託です。
個別企業を選別するのではなく、市場全体の成長をそのまま取り込むことを目的としています。
今回、残高10兆円を突破したのは、2018年に設定された「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」です。
長期投資を前提とした低コスト設計が評価され、積立投資の受け皿として急速に存在感を高めてきました。
なぜ10兆円まで増えたのか
最大の要因は新NISAのスタートです。
非課税投資枠が拡大され、つみたて投資と成長投資を併用できる制度に変わったことで、長期・分散投資が実践しやすくなりました。
特にS&P500連動投信は、
・投資対象が分かりやすい
・世界経済の成長に乗るというストーリーが明確
・信託報酬が極めて低い
といった特徴から、NISA口座での積立先として選ばれやすかったと考えられます。
もう一つの大きな要因が物価上昇です。
預貯金を持っているだけでは実質的な価値が目減りするという感覚が、幅広い世代に共有されるようになりました。
その結果、「貯蓄から投資へ」という流れが、掛け声ではなく実行段階に入ったといえます。
インデックス投資拡大の意味
S&P500連動投信に限らず、インデックス型投資信託全体の残高はこの5年間で急拡大しています。
これは、投資の考え方そのものが変わってきたことを示しています。
かつては、
・相場を読む
・値上がり銘柄を当てる
・短期で利益を狙う
といった投資観が主流でした。
一方で、現在広がっているのは、
・長期
・分散
・低コスト
を重視する資産形成型の投資です。
S&P500連動投信の10兆円到達は、日本の個人投資家がより合理的な投資行動を選び始めた象徴ともいえます。
注意すべき点もある
ただし、S&P500連動投信が「万能」というわけではありません。
いくつか注意点も整理しておく必要があります。
第一に、米国株式への集中です。
S&P500は米国市場に限定された指数であり、為替変動や米国経済の影響を大きく受けます。
第二に、短期的な価格変動です。
長期的には成長が期待されるとしても、短期では大きな下落局面も経験します。
積立投資であっても、値動きへの理解は不可欠です。
第三に、投資目的との整合性です。
老後資金、教育資金、近い将来使うお金など、目的によって適切な資産配分は異なります。
S&P500連動投信はあくまで手段の一つであり、全てを任せるべき対象ではありません。
結論
S&P500連動投信が残高10兆円に達したことは、新NISAと物価高という環境変化の中で、日本の資産形成が新たな段階に入ったことを示しています。
低コストで世界経済の成長を取り込むという考え方は、長期的な資産形成において合理的な選択肢の一つです。
一方で、投資対象の偏りや価格変動リスクを理解したうえで、自身の目的に合った形で活用することが重要です。
「人気があるから」「みんなが買っているから」ではなく、
なぜ選ぶのか、どの位置づけで持つのかを考えることが、これからの投資には求められます。
参考
・日本経済新聞「S&P500連動投信、残高10兆円 初の大台、NISA・物価高で弾み」(2026年1月8日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

