為替と海外資産投資 円安はなぜ続くのか ― 金利差と財政不安という二つの視点

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

ここ数年、「円安」という言葉を目にしない日はほとんどありません。
2021年初めには1ドル=100円前後だった為替レートが、2024年には一時160円台に達し、2026年初頭の現在も150円台後半で推移しています。わずか数年で、円の価値は大きく変化しました。

円安は輸入物価の上昇を通じて家計に影響を及ぼす一方、海外資産への投資を考えるうえでは無視できない要素でもあります。
本稿では、なぜ円安が続いているのかを「金利」と「財政」という二つの軸から整理し、円安が私たちの資産形成にどのような意味を持つのかを考えていきます。


1.円安の基本要因 ― 日米の金利差

為替相場を動かす最大の要因の一つが「金利差」です。
一般に、金利の高い通貨は運用面で有利になるため買われやすく、金利の低い通貨は売られやすくなります。

日本は長期間にわたるデフレと低成長を背景に、超低金利政策を続けてきました。一方、米国はインフレ抑制を目的として高金利政策を進めてきたため、日米間には大きな金利差が生じました。その結果、円を売ってドルを買う動きが強まり、円安が進行してきたのです。

2025年末には、米国が利下げに転じ、日本銀行が利上げを実施しました。一見すると日米金利差は縮小し、円高に向かっても不思議ではありません。しかし、実際の為替市場では円安方向に振れる場面も見られました。


2.名目金利では見えない「実質金利」

この背景として重要なのが「実質金利」という考え方です。
実質金利とは、名目金利から物価上昇率を差し引いた、実質的な金利水準を指します。

日本では足元で物価上昇率が2~3%程度となっています。仮に政策金利が0.75%まで引き上げられても、実質金利はマイナス圏にとどまります。一方、米国では利下げ後も実質金利がプラスを維持しています。

このため、金利差が縮小したように見えても、「実質的にはドルの方が有利」という構図は大きく変わっていません。為替市場ではこの実質金利の差が意識され、円安圧力が残り続けていると考えられます。


3.将来予想が為替を動かす

為替相場は、現在の状況だけでなく「将来どうなるか」という予想を織り込みながら動きます。
日本銀行の金融政策に関する発言が慎重と受け止められると、「今後も急激な利上げは行われないのではないか」という見方が広がり、円売りにつながることがあります。

市場参加者の期待が変化するだけで為替が動く点は、実体経済以上に為替が「心理」に左右される側面を持っていることを示しています。


4.もう一つの円安要因 ― 財政への懸念

近年、円安要因として指摘されることが増えているのが、日本の財政状況です。
物価高対策や景気下支えのための財政支出が拡大すると、国債の発行額も増加します。国の借金が膨らむことは、通貨に対する信認低下につながりやすく、長期的には円の価値を押し下げる要因となります。

日米の金利差が縮小しても円安圧力が根強い背景には、こうした「潜在的な円安要因」が存在しているとの見方があります。金利だけでは説明できない円安が続いている点は、今後の為替を考えるうえで重要な視点です。


5.円安は家計と企業に何をもたらすか

円安が進むと、輸入品の価格が上昇します。食品、エネルギー、日用品など、私たちの生活に直結する分野への影響は避けられません。
一方で、輸出企業やインバウンド関連産業にとっては追い風となります。

個人の立場では、円建ての預貯金は物価上昇によって実質的な価値が目減りする一方、外貨建て資産は円安の恩恵を受ける場面があります。この点が、海外資産投資への関心が高まっている理由の一つです。


結論

円安は単なる一時的な現象ではなく、
・実質金利の差
・金融政策の先行きへの見方
・財政への不安
といった複数の要因が重なり合って生じています。

今後、円高に転じる局面が訪れる可能性も否定できませんが、円安リスクが続くことを前提に、資産の一部を海外資産に分散するという考え方には一定の合理性があります。

次回は、こうした円安環境の中で「海外資産投資とどう向き合うか」、為替変動リスクとの付き合い方を整理していきます。


参考

・日本経済新聞「マネー相談 黄金堂パーラー〉為替と海外資産投資(上)円安の理由」
・日本経済新聞「潜在的な円安圧力大きく」
・第一生命経済研究所 熊野英生氏 コメント


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました