住宅は、多くの人にとって人生最大の買い物です。これまで日本では、超低金利環境が長く続き、住宅ローンを利用して購入することが合理的と考えられてきました。しかし、2025年以降、金利環境は明らかに転換点を迎えています。
金利上昇は、住宅の「買い時」「借り方」だけでなく、「そもそも購入すべきか、賃貸にすべきか」という根本的な選択にも影響を与えます。2026年の住宅市場は、まさに分かれ道に立たされていると言えるでしょう。
本稿では、金利上昇局面における住宅選択について、コスト構造やリスクの視点から整理していきます。
住宅の保有コストとは何か
住宅を購入する場合、支払うのはローン返済だけではありません。建物は時間とともに価値が減少し、維持・管理のための費用も発生します。
仮に建物の価値を50年で償却すると考えると、固定資産税、管理費、修繕積立金などを含めた保有コストは、年率でおおむね3%強とされています。ここに住宅ローン金利が加わることで、実質的な「住居コスト」が形成されます。
2025年頃までの変動金利は0.4%前後と極めて低水準でした。この環境では、保有コストの合計は3%台半ばに収まり、賃料水準と比較しても購入が有利と判断されるケースが多く見られました。
金利上昇がもたらす構造変化
ところが、金利が上昇すると状況は一変します。
金利が0.5ポイント上昇するだけでも、住宅の保有コストは明確に増加します。しかも、この上昇は一時的なものではなく、今後も続く可能性が指摘されています。
一方で、物件価格の上昇を背景に、都心マンションの賃貸利回りは低下傾向にあります。物件価格に対する賃料の割合は、2%台から3%程度にまで下がってきました。
その結果、「購入して保有するコスト」が「賃貸で住むコスト」を上回る局面に入りつつあります。かつての「買った方が得」という前提は、金利上昇によって崩れ始めているのです。
賃貸にもリスクはある
もちろん、賃貸が万能というわけではありません。
賃料は将来上昇する可能性がありますし、更新料や転居の自由度など、心理的・生活上の要素も考慮が必要です。
ただし、賃料が上昇する局面では、同時に住宅の保有コストも上昇している可能性が高い点には注意が必要です。金利、修繕費、税負担は、いずれも長期的に上昇しやすい要素です。
重要なのは、「賃貸か購入か」という二者択一ではなく、それぞれのコストとリスクを冷静に比較することです。
価格上昇期待と購入意欲
それでも、住宅購入意欲は依然として高い水準にあります。その背景には、地価やマンション価格が今後も上がるという期待があります。
実際、地価見通しに関する指標は、過去と比べても高い水準にあります。しかし、「上がると思うから買う」という行動は、価格上昇そのものを前提にした判断であり、慎重な検討が必要です。
住宅は居住用資産であり、短期的な価格変動を前提にした投資対象とは本来性質が異なります。
超長期ローンの落とし穴
近年、50年ローンなどの超長期住宅ローンが一般化しつつあります。返済期間を長くすることで、毎月の返済額を抑えられる点は魅力的です。
しかし、50年ローンでは、10年間支払い続けても元本は2割弱しか減りません。ライフスタイルの変化や転勤、家族構成の変化によって売却を余儀なくされた場合、売却価格よりもローン残高が多い状態に陥るリスクが高まります。
さらに、変動金利を選択している場合、金利上昇時には「5年ルール」や「1.25倍ルール」により返済額の増加が先送りされます。その結果、元本の減少がさらに遅れ、将来的な負担が膨らむ可能性があります。
住宅市場は迷い始めている
首都圏の新築マンションでは、初月契約率が70%を下回る状況が続いています。これは市場の好不調を測る一つの目安とされてきました。
この数字は、住宅購入を巡る判断が難しくなっていることを示唆しています。価格、金利、将来の不確実性を前に、消費者が慎重になっていると考えられます。
結論
金利上昇は、住宅選択の前提条件を大きく変えました。
購入が必ずしも有利とは言えない時代に入り、賃貸との比較はこれまで以上に重要になっています。
重要なのは、「今買うべきか」「借り方は適切か」「将来の変化に耐えられるか」を、自分自身のライフプランと照らし合わせて考えることです。2026年の住宅市場は、誰にとっても判断が分かれる十字路に立っています。
流れに流されるのではなく、数字とリスクを踏まえた冷静な選択が、これまで以上に求められています。
参考
日本経済新聞
「金利上昇で岐路に立つ住宅の選択」2026年1月7日 夕刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

