日本株の中でも象徴的な存在となった総合商社。その中で、近年ひときわ注目を集めてきたのが伊藤忠商事です。
米投資会社バークシャー・ハザウェイによる出資、いわゆる「バフェット・マネー」の流入をきっかけに、市場の評価は大きく変わりました。
しかし2026年を迎え、投資環境は新たな局面に入っています。
ウォーレン・バフェット氏の引退、高値圏にある株価、そして市場の要求水準の上昇。
伊藤忠は今後も「中長期で持ち続けられる銘柄」であり続けるのでしょうか。本稿では、利益成長と株主還元の両面から、その戦略を整理します。
バフェット後も続く関係性
バークシャーによる日本の総合商社株保有が明らかになったのは2020年でした。その後、伊藤忠の時価総額は約4倍に拡大し、現在も議決権ベースで9%台の保有が続いています。
注目されたのは、バフェット氏引退後のスタンスです。後継者が示す姿勢は、単なる投資継続にとどまらず、「考え方の継承」に重きを置くものでした。これは短期資金ではなく、長期投資としての位置づけが変わらないことを意味します。
資本効率を軸にした経営
伊藤忠の最大の強みは、世界基準で見ても高水準の資本効率です。直近のROEは15%超と、国内企業はもちろん、同業の大手商社を上回っています。
もっとも、ROEの維持は容易ではありません。利益が積み上がるほど自己資本は増え、ROEは低下しやすくなります。したがって、利益成長だけでなく、株主還元による自己資本のコントロールが不可欠となります。
株主還元の「質」が問われる局面
伊藤忠は連続増配を続け、総還元性向40%以上を掲げてきました。さらに、還元水準の引き上げも視野に入れています。
仮に総還元性向を高めれば、ROE15%を維持するために必要な利益成長率は下がります。これは、安定的な収益構造を持つ企業にとって合理的な選択です。
一方で、還元強化は成長投資とのバランスが重要になります。
非資源分野と投資戦略
伊藤忠は資源依存度が低く、非資源分野を中心に利益を積み上げてきました。繊維、食料、情報・金融といった分野では、投資先に深く関与する「ハンズオン経営」が特徴です。
2026年以降も大型の投資枠を確保し、成長余地のある案件を選別していく姿勢が示されています。ここで問われるのは、量ではなく質です。成熟産業であっても収益力を高められるかが試されます。
結論
伊藤忠商事は、すでに「割安株」ではありません。
それでもなお投資対象として評価される理由は、利益成長、株主還元、資本効率を一体で考える経営姿勢にあります。
バフェット氏引退後も関係が続くと見られる背景には、短期的な株価ではなく、企業価値そのものを高める仕組みがあります。
2026年は、これまで築いてきた評価を「維持する年」ではなく、「次の基準を示す年」になるでしょう。
日本株を代表する存在として、伊藤忠がどこまで投資家の期待に応えられるのか。その真価が問われています。
参考
・日本経済新聞「注目銘柄2026(2)伊藤忠、バフェット・マネーと蜜月続く」
・伊藤忠商事 統合報告書(直近年度)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
