アルコール使用障害300万人時代③ 治療できる病気なのに、なぜ支援につながらないのか

FP
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アルコール使用障害は、医学的には「治療の対象となる疾患」です。薬物療法や心理的支援、環境調整など、回復に向けた選択肢は複数存在します。それにもかかわらず、日本では多くの人が医療や公的支援につながらないまま、問題を長期化させています。

今回の調査で、アルコール使用障害が疑われる人が約300万人に上る一方、依存症として医療や支援につながっている人はごく一部にとどまっています。このギャップはどこから生まれているのでしょうか。


アルコール使用障害は「意志の問題」ではない

アルコール使用障害は、単なる飲み過ぎや生活習慣の乱れではありません。脳の働きに影響を及ぼし、飲酒量や頻度を自分で調整する力が低下する疾患です。

国際的には、世界保健機関(WHO)の基準に基づくスクリーニングテストが用いられ、飲酒行動や生活への影響から客観的に評価されます。本人の性格や努力不足ではなく、医療的に評価される状態であることが明確にされています。

それでも日本では、「自分で何とかすべき」「気合いでやめられるはずだ」という考え方が根強く、受診や相談のハードルを高くしています。


医療につながるまでの高い壁

アルコール使用障害の治療は、必ずしも入院から始まるわけではありません。外来通院やカウンセリング、薬物療法など、生活を維持しながら取り組める方法もあります。

しかし、実際には医療機関を受診する段階までたどり着かない人が多くいます。理由の一つは、「依存症」という言葉への強い抵抗感です。診断を受けることで、社会的評価が下がるのではないか、仕事や家庭に悪影響が及ぶのではないかという不安が先立ちます。

また、専門医療機関の存在自体を知らないケースも少なくありません。今回の調査でも、国が公表した飲酒指針を知っている人は4%程度にとどまり、情報の届かなさが浮き彫りになっています。


相談支援はあるが、届いていない

医療以外にも、相談窓口や支援機関は複数整備されています。自治体の相談窓口や専門センター、家族向けの支援も制度上は用意されています。

例えば、アルコール依存症の専門医療を担ってきた国立病院機構久里浜医療センターは、調査や啓発活動を通じて実態把握と支援体制の充実を図っています。それでもなお、支援の存在が十分に認識されているとは言えません。

理由の一つは、「相談=問題が深刻化した証拠」と受け取られやすいことです。軽度の段階で相談する文化が根づいておらず、限界に近づいてから初めて支援を探す構造が残っています。


家族・職場との連携が難しい現実

アルコール使用障害は、本人だけでなく家族や職場にも影響します。しかし、医療・支援制度と家族・職場の連携は十分とは言えません。

家族は「本人の同意がないと動けない」と感じ、職場は「私生活への介入を避けたい」と判断しがちです。その結果、誰も最初の一歩を踏み出せず、問題が固定化してしまいます。

本来は、家族や職場が早期に相談先を知り、本人を責めることなく支援につなぐ役割を果たすことが重要です。しかし、そのための情報共有やガイドラインは十分に浸透していません。


結論

アルコール使用障害は治療できる病気であり、支援制度も存在します。それでも多くの人がそこにつながらないのは、制度の不足よりも「届き方」に問題があるからです。

依存症という言葉への偏見、相談することへの心理的抵抗、軽度の段階で支援につながれない社会構造が、回復の機会を狭めています。300万人という数字は、治療を拒んでいる人の数ではなく、支援にたどり着けていない人の数だと捉える必要があります。

次回は、アルコール使用障害が生活や家計にどのような影響を及ぼし、税や社会保障の制度とどのように関わってくるのかを整理します。


参考

・日本経済新聞「アルコール障害疑い300万人 24年、18年調査と同水準」
・国立病院機構久里浜医療センター アルコール使用障害に関する調査結果
・世界保健機関(WHO)アルコール使用障害に関する基準
・アルコール健康障害対策基本法


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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