アルコール障害疑い300万人という現実──「知っているつもり」が支援を遠ざけている

FP
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日本では、飲酒は長く日常文化の一部として受け止められてきました。仕事終わりの一杯や、行事・会合での酒席は珍しいものではありません。しかし、その陰で「飲酒が原因で生活や健康に支障をきたしている人」がどれほどいるのかについては、十分に共有されてきたとは言い難い状況です。

2024年に実施された調査で、アルコール使用障害が疑われる人が推計約300万人にのぼることが明らかになりました。しかも、その水準は2018年調査とほぼ変わっていません。この結果は、単に医療の問題にとどまらず、社会全体の「向き合い方」が問われていることを示しています。


アルコール使用障害とは何か

アルコール使用障害とは、飲酒量や頻度を自分でコントロールできなくなり、心身や日常生活に支障が生じる状態を指します。いわゆる「意志が弱い」「酒癖が悪い」といった性格の問題ではなく、医学的に位置づけられた疾患です。

重症化すると依存症に進行し、身体疾患だけでなく、家庭内トラブルや職場での問題、暴力や事故など、周囲を巻き込む深刻な影響が生じることもあります。高血圧やがんの発症リスクが高まることも指摘されており、長期的な健康リスクも無視できません。


300万人という数字が示す停滞

今回の調査では、過去1年にアルコール使用障害が疑われた人は推計約304万人でした。症状が重い依存症と一度でも疑われた人も約64万人に上ります。これらはいずれも、2018年調査とほぼ同水準です。

2014年にはアルコール健康障害対策基本法が施行され、国はリスクの周知や支援体制の整備を進めてきました。それにもかかわらず、数値が改善していない点は重く受け止める必要があります。対策が存在しても、それが十分に届いていない可能性があるからです。


知られていない「飲酒指針」

国は2024年、年代や体質に応じた飲酒の留意点をまとめた指針を公表しました。しかし、今回の調査でその内容を「知っている」と答えた人はわずか4.2%にとどまりました。

この数字は、啓発の難しさを象徴しています。多くの人は「自分は問題ない」「依存症は一部の人の話」と考えがちです。結果として、注意喚起が必要な層ほど情報に触れず、支援につながらない構造が生まれている可能性があります。


男性に顕著な二極化

調査では、飲酒頻度の二極化も確認されました。男性では「週4回以上飲む」が最多である一方、「全く飲まない」層も多く存在しています。女性では「全く飲まない」が最も多く、全体として男性の方がリスクが高い傾向が続いています。

この構図は、働き方や社会的役割、飲酒を伴う慣習など、生活環境の影響を強く受けていると考えられます。個人の問題として切り分けるのではなく、社会構造の一部として捉える視点が欠かせません。


結論

アルコール使用障害が疑われる人が300万人規模で存在し、その状況が6年間ほとんど変わっていないという事実は、単なる医療データではありません。「問題がある人ほど支援情報に届かない」という構造的な課題を示しています。

飲酒は個人の嗜好の問題とされがちですが、健康、家庭、仕事、地域社会に広く影響します。だからこそ、恥や自己責任論に押し込めるのではなく、「誰にでも起こり得るリスク」として正しく共有し、相談や支援につながりやすい環境を整えることが重要です。

数字が横ばいである今こそ、対策の量ではなく、届き方そのものを見直す時期に来ているのではないでしょうか。


参考

・日本経済新聞「アルコール障害疑い300万人 24年、18年調査と同水準」
・国立病院機構久里浜医療センター アルコール使用障害に関する調査結果
・アルコール健康障害対策基本法(2014年施行)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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