副業を行う会社員や個人事業主にとって、確定申告で最も悩みやすいのが「経費」と「帳簿」の扱いです。
収入自体は把握できていても、どこまでを経費としてよいのか、どのように記録・保存すべきかについては、毎年のように迷いが生じます。
2026年に行う確定申告では、経費や帳簿の基本的な考え方が大きく変わったわけではありません。
しかし、電子申告の定着や電子帳簿保存法の影響により、実務上の前提は確実に変化しています。
本稿では、副業・個人事業主に特に影響が大きい実務面の変更点を整理し、
「今年の申告で意識すべきポイント」
を確認していきます。
経費の考え方は「より説明できるか」が問われる
経費計上の基準自体は変わっていない
経費の基本は、今年も変わっていません。
収入を得るために直接必要となった支出が、必要経費として認められます。
問題になるのは、制度ではなく実態の説明です。
- その支出は何のためか
- どの収入と関係しているか
- 私的な支出と混在していないか
これらを説明できるかどうかが、これまで以上に重要になっています。
副業の場合は「業務性」がより重視される
副業の場合、事業所得か雑所得かに関わらず、
経費については「業務との関係性」が強く意識されます。
特に注意が必要なのは、次のような支出です。
- 自宅の家賃・光熱費
- 通信費
- パソコン・周辺機器
これらは業務に使っていることが事実であっても、
按分の考え方や根拠が曖昧だと、説明が難しくなります。
「前年も同じ割合で計上したから」という理由だけでは、十分とは言えません。
帳簿付けは「形式」より「継続性」
帳簿の種類よりも中身が重要
帳簿についても、特別に新しい様式が求められているわけではありません。
手書き、表計算ソフト、会計ソフトなど、方法はさまざまです。
重要なのは、
- 収入と支出が網羅されているか
- 日付・内容・金額が明確か
- 継続して記録されているか
という点です。
形式よりも、「後から見て内容が分かるか」が重視されます。
開業初期・副業初期ほど注意が必要
副業を始めたばかりの人や、開業間もない個人事業主の場合、
帳簿付けが後回しになりがちです。
しかし、確定申告直前にまとめて処理しようとすると、
- 支出内容を思い出せない
- 領収書の整理が追いつかない
- 経費計上をあきらめてしまう
といった事態になりやすくなります。
今年の申告をきっかけに、「日常的な記録」を意識することが重要です。
電子帳簿保存法との関係をどう考えるか
電子保存が「例外」ではなくなっている
電子帳簿保存法は、特定の事業者だけの制度ではありません。
副業を含む個人事業主にとっても、無関係ではなくなっています。
特に、
- 電子で受け取った請求書や領収書
- メール添付のPDF
- ダウンロードした取引明細
これらは、原則として電子のまま保存することが求められます。
紙に印刷すればよい、とは限らない
誤解が多い点として、「紙に印刷すれば問題ない」という考え方があります。
しかし、電子で受け取ったデータについては、一定の要件を満たした形での電子保存が前提となっています。
すべてを完璧に対応する必要はありませんが、
少なくとも「電子で受け取ったものは電子で残す」という意識は持っておく必要があります。
副業会社員が見落としやすいポイント
給与と副業の帳簿は分けて考える
会社員の場合、給与については会社側で年末調整が行われます。
一方、副業については、自分自身で帳簿を管理する必要があります。
この二つを混同すると、
- 経費の二重計上
- 所得の整理ミス
につながるおそれがあります。
給与は「確定した数字」、副業は「自分で整理する数字」として、
切り分けて考えることが大切です。
少額でも帳簿は必要
「副業の収入が少ないから、帳簿は簡単でよい」と考えがちですが、
金額の多寡にかかわらず、帳簿の考え方は同じです。
むしろ少額のうちから記録を習慣化しておくことで、
将来、事業規模が大きくなった際にもスムーズに対応できます。
結論
今年の確定申告における副業・個人事業主の実務ポイントは、
やり方を変えることより、説明できる形に整えることにあります。
- 経費は業務との関係を説明できるか
- 帳簿は継続して記録されているか
- 電子データの保存を意識できているか
これらを意識することで、申告時の負担を減らすだけでなく、
将来のトラブルを防ぐことにもつながります。
次回は、消費税・インボイス制度について、
今年の確定申告で特に注意すべき実務ポイントを整理します。
参考
- 国税庁「必要経費の考え方」
- 国税庁「帳簿の記帳・保存制度」
- 国税庁「電子帳簿保存法の概要」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
