本シリーズでは、世界で20億人を超えるα世代が、どのような社会を引き受けることになるのかを見てきました。
AIネーティブとして育ち、人口増加の終着点と技術革新の加速が重なる時代に生きる世代。分断と格差、環境問題、長寿化、国家や企業の戦略、そして日本という人口減少国家の現実まで、α世代を取り巻く環境は極めて重層的です。
ここで改めて問いたいのは、「私たちはα世代に何を託すのか」、そして「何を託してはいけないのか」という点です。
未来を考えることは、若者を語ることではなく、今を生きる大人の責任を見つめ直すことでもあります。
α世代が直面する世界の整理
α世代が引き受ける世界には、いくつかの特徴があります。
第一に、成長が前提でない社会です。
経済成長がすべての問題を解決してくれる時代は終わりつつあります。低成長、人口減少、資源制約の中で、分配や制度設計を調整し続ける社会が前提になります。
第二に、技術が生活の前提となる社会です。
AIやデジタル技術は、選択肢ではなく前提条件です。使うか使わないかではなく、どう使い、どう距離を取るかが問われます。
第三に、価値観の多様性が当たり前の社会です。
一つの正解や統一された生き方を前提とすることは難しくなっています。違いが存在すること自体を前提に、共存のルールを探る必要があります。
α世代は、これらを「変化」としてではなく、「初期条件」として生きる世代です。
託してよいもの
では、私たちはα世代に何を託してよいのでしょうか。
一つ目は、新しい発想と技術の活用です。
AIやデジタル技術を自然に使いこなし、既存の枠組みに縛られずに考える力は、α世代の大きな強みです。制度や慣行をアップデートする役割は、若い世代が担いやすい部分でもあります。
二つ目は、多様性を前提とした社会の実装です。
違いをなくすのではなく、違いを抱えたまま社会を回す。その感覚は、分断が可視化された時代を見て育ったα世代ならではのものです。
三つ目は、未来を選び取る主体性です。
どの技術を使うのか、どの価値観を大切にするのか。正解が用意されていない時代において、選択し続ける力は重要です。
託してはいけないもの
一方で、託してはいけないものも明確です。
第一に、制度疲労のツケです。
年金、医療、税、教育、労働といった制度は、これまでの世代が設計し、運用してきたものです。その限界が見えているにもかかわらず、「若い世代が何とかする」という形で先送りすることは許されません。
第二に、過度な期待や理想像です。
α世代を「希望の世代」「救世主」として描くことは、一見ポジティブに見えて、実は大きな負担を与えます。誰かが世界を救うという物語は、現実的ではありません。
第三に、責任の個人化です。
環境問題も、格差も、社会保障も、個人の努力だけで解決できる問題ではありません。構造的な課題を個人の選択や意識に押し付けることは、問題の本質を覆い隠します。
大人世代が今すべきこと
α世代に託す前に、今を生きる大人世代がすべきことがあります。
一つは、制度を点検し、更新することです。
成長を前提に設計された制度が、今の社会に適合しているのかを冷静に見直す必要があります。痛みを伴う調整から逃げず、次の世代に渡せる形に整えることが求められます。
二つ目は、対話の場を用意することです。
若者の声を「聞く」のではなく、「一緒に考える」姿勢が重要です。答えを教えるのではなく、問いを共有する関係性が必要になります。
三つ目は、失敗できる余地を残すことです。
技術革新も社会の更新も、試行錯誤なしには進みません。失敗を許さない社会は、挑戦を奪います。α世代が挑戦できる余白を守ることは、大人の役割です。
結論
α世代は、確かに人類史上まれに見る規模と影響力を持つ世代です。
しかし、それは特別に恵まれているからではなく、制度と技術と人口の転換点に立たされているからです。
未来を託すことと、責任を押し付けることは違います。
α世代に希望を見いだすなら、同時に私たち自身が何を引き受けるのかを明確にしなければなりません。
α世代が引き受ける世界は、私たちが今つくり続けている世界でもあります。
世代を分けて語るのではなく、同じ時代を生きる当事者として向き合うこと。その積み重ねこそが、次の社会を形づくる基盤になるはずです。
参考
・日本経済新聞「α-20億人の未来」特集
・日本経済新聞「自由な世界、自ら描く α世代1123人の声」
・日本経済新聞「人類100億時代、命運握る」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

