α世代を特徴づける言葉として、近年よく使われるのが「AIネーティブ」です。
デジタルネーティブという言葉が、インターネットやスマートフォンとともに育った世代を指したのに対し、AIネーティブはさらに一段階進んだ存在だといえます。生まれたときから、検索、翻訳、画像生成、文章作成といった高度な処理をAIが担う社会に身を置いているからです。
しかし、AIネーティブという言葉から連想されがちな「AIを盲信する若者像」は、実態とは必ずしも一致しません。α世代は、便利さと同時に不安や違和感も抱えながら、AIと共存しています。本稿では、α世代がAIとどのような距離感で向き合っているのか、その現実を整理します。
AIは特別な存在ではない
α世代にとって、AIは「最新技術」ではありません。
調べもの、宿題、趣味、買い物、将来の進路に関する情報収集まで、AIは日常生活の中に自然に組み込まれています。インターネット検索とAIの違いを強く意識することなく、目的に応じて使い分ける感覚に近いといえるでしょう。
特徴的なのは、「答えを早く知りたい」という欲求が、AI利用を後押ししている点です。検索結果をいくつも読み比べるより、要点をまとめて提示してくれるAIの方が効率的だと感じる若者は少なくありません。
この感覚は、時間を節約し、その分を別の活動に使いたいという、タイムパフォーマンス重視の価値観とも結びついています。
盲信ではなく、前提としての利用
一方で、α世代はAIの出力を無条件に信じているわけではありません。
AIが誤った情報を示すことがある、いわゆる「もっともらしい間違い」を出すことがあるという点は、多くの若者が理解しています。違和感を覚えた場合には、別の情報源で確認する、あるいはAIに追加で質問を重ねるといった行動が見られます。
これは、AIを「正解を与える存在」ではなく、「考える材料を提供する存在」として捉えていることの表れです。
上の世代がAIに対して抱きがちな過度な期待や過度な警戒とは異なり、α世代は実用的で冷静な距離感を保っています。
AIに相談するという行為
注目すべき変化の一つが、AIに「相談する」行為が広がっている点です。
進路、勉強方法、人間関係といったテーマについて、AIに意見を求める若者は少なくありません。これは、AIが感情を理解しているからというよりも、否定されることなく意見を返してくれる存在として受け止められているためです。
ただし、人生の重要な決断をすべてAIに委ねているわけではありません。
多くの若者は、「本当に大事なことは信頼できる人に相談する」と明確に線引きをしています。AIは補助的な存在であり、最終判断を下すのは自分自身、あるいは人との対話だという認識が根底にあります。
不安としてのAI
AIに対する信頼が高い一方で、α世代は不安も同時に抱えています。
特に多いのが、AIの悪用や制御不能への懸念です。戦争や犯罪への利用、フェイク情報の拡散などは、若者自身が強く意識しているリスクです。
また、「AIが人間の知能を超えたとき、社会はどうなるのか」という問いも共有されています。
便利さを享受する一方で、技術が進みすぎた場合の影響を直感的に理解している点は、AIネーティブ世代ならではの特徴だといえます。
学ぶべきものとしてのAI
α世代にとって、AIは使うだけでなく「学ぶべき対象」でもあります。
将来に向けて身につけるべきものとして、AIの活用を挙げる若者は多く、外国語や経済と並ぶ重要分野として認識されています。
これは、AIが仕事を奪う存在だという単純な見方とは異なります。
AIと共存し、使いこなす能力こそが、自分自身の可能性を広げると捉えているのです。この感覚は、恐怖よりも適応を優先する姿勢として表れています。
「リアル」と「デジタル」の境界
α世代は、リアルとデジタルのどちらか一方に偏って生きているわけではありません。
現実世界の人間関係や体験を重視しながら、必要に応じてデジタルやAIを組み合わせる傾向があります。デジタル空間の方が自分らしくいられると感じる人もいますが、多くは両者を切り離さずに捉えています。
この感覚は、AIが生活に溶け込む今後の社会を考えるうえで重要な示唆を与えます。AIが人間を置き換えるのではなく、人間の活動を補完する存在として位置づけられる可能性が高いからです。
結論
α世代にとってAIは、驚異でも救世主でもありません。
便利さと不安を同時に受け止めながら、現実的に使いこなす存在です。盲信せず、拒絶もせず、前提として共存する。その姿勢は、AI時代を生きる一つの成熟したモデルだといえます。
AIネーティブであるα世代は、技術に振り回される世代ではありません。
技術を使いながら、技術と距離を取り、自分たちの判断を保とうとしています。その姿勢こそが、次の社会を形づくる重要な要素になるでしょう。
次回は、こうしたAIネーティブ世代が、成長が鈍化し、格差や分断が広がる社会をどのように引き受けていくのかを考えます。
参考
・日本経済新聞「α-20億人の未来」特集
・日本経済新聞「自由な世界、自ら描く α世代1123人の声」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
