新NISA・iDeCo・退職金― 資産形成制度はどう使い分けるべきか ―

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新NISAの利用が2年目を迎え、個人投資家の投資額は拡大を続けています。一方で、資産形成制度としては、新NISAのほかにiDeCo(個人型確定拠出年金)や、企業を通じて積み立てられる退職金制度も存在します。
本稿では、新NISAの特徴を整理したうえで、iDeCoや退職金制度と比較しながら、それぞれの役割と使い分けについて考えます。


新NISAの基本的な位置づけ

新NISAは、投資による運用益が非課税となる制度であり、最大の特徴は「自由度の高さ」にあります。
投資対象は投資信託や個別株式と幅広く、年間360万円まで投資可能で、非課税期間にも制限がありません。また、必要に応じて資産を売却し、現金化できる点も大きな利点です。

この柔軟性により、新NISAは中長期の資産形成だけでなく、将来のライフイベントに備える「準備資金」としても活用しやすい制度といえます。


iDeCoの特徴と新NISAとの違い

iDeCoは、老後資金の形成に特化した制度です。最大の特徴は、掛金が全額所得控除となる点にあります。
現役時代の所得税・住民税を軽減しながら積み立てができるため、節税効果は新NISAよりも大きいケースが少なくありません。

一方で、原則60歳まで資金を引き出せないという制約があります。資金拘束がある分、老後資金として確実に残しやすい反面、途中で使う可能性のある資金には向きません。
新NISAが「柔軟な資産形成」であるのに対し、iDeCoは「老後専用の資産形成」と位置づけるのが適切です。


退職金制度の性格

退職金は、多くの場合、企業が制度設計を行い、従業員は受動的に積み立てる仕組みです。
退職所得控除という大きな税制優遇があり、長期間勤続するほど税負担が軽減される設計になっています。

ただし、退職金は勤務先や雇用形態による差が大きく、自分でコントロールできる余地は限られています。また、転職や早期退職によって想定より少なくなるリスクもあります。
その意味で、退職金は「基礎的な老後資金」として位置づけ、補完的に他の制度を活用する視点が重要になります。


制度ごとの役割分担を整理する

新NISA、iDeCo、退職金は、それぞれ目的と性格が異なります。

新NISAは、自由度が高く、ライフステージに応じて使える資産形成手段です。
iDeCoは、老後資金に特化した強力な節税型制度です。
退職金は、企業任せではあるものの、老後資金の土台となる制度です。

いずれか一つを選ぶというよりも、役割分担を意識して組み合わせることが現実的です。


実務的な使い分けの考え方

現役世代にとっては、まず老後資金として確保すべき部分をiDeCoと退職金で押さえ、そのうえで新NISAを活用する流れが考えられます。
新NISAは、老後資金に限らず、教育資金や住宅取得後の予備資金など、用途を限定しない「調整弁」として機能します。

一方で、50代以降になると、資金の使い道や引き出し時期を意識した設計がより重要になります。
iDeCoや退職金の受取方法、タイミングによっては税負担が大きく変わるため、新NISAを使って受取時期を分散させるという視点も有効です。


インフレ環境下での注意点

インフレが続く環境では、いずれの制度においても「現金で持ち続けるリスク」を意識する必要があります。
退職金やiDeCoも、受け取った後にどのように運用・取り崩すかまで含めて考えなければ、実質的な価値は目減りします。

新NISAは、こうした受取後の運用や資金調整にも使いやすく、インフレ時代の補完的な役割を担っています。


結論

新NISA、iDeCo、退職金は、競合する制度ではなく、相互に補完し合う関係にあります。
新NISAは自由度、iDeCoは節税効果、退職金は基礎的な老後資金という役割を意識することで、制度の長所を活かした資産形成が可能になります。

制度を単体で捉えるのではなく、人生全体の資金設計のなかでどう配置するか。その視点こそが、インフレ時代の資産形成において重要になってきています。


参考

・日本経済新聞「新NISA、2年目は7%増の12兆円 資産形成、インフレで拡大」(2025年12月30日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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