相続税は今後どうなるのか――少子高齢化社会の税制の行方

FP
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相続税について考えるとき、多くの人が気にするのは「これからどうなるのか」という点です。
税率が上がるのか、対象がさらに広がるのか、それとも別の形に変わっていくのか。大相続時代と呼ばれる現在、その行方は誰にとっても無関係ではありません。

少子高齢化が進む日本では、相続税を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変わろうとしています。今回は、今後の相続税がどのような方向に進む可能性があるのかを、制度・人口動態・財政の視点から整理します。

相続される資産総額は増え続ける

日本総合研究所などの試算によると、国内で1年間に相続される資産の総額は、すでに40兆円台後半に達しています。
高齢化に伴い死亡者数が増えるため、この金額は2030年ごろに約49兆円、2040年ごろには50兆円を超えると見込まれています。

相続される資産が増えるということは、相続税の課税ベースが拡大することを意味します。
制度を大きく変えなくても、税収が自然に増えやすい環境が整っていると言えます。

少子化が課税を押し広げる構造

少子化の進行は、相続税のあり方に大きな影響を与えています。
相続人の数が減ることで、1人あたりが受け取る財産が増え、基礎控除を超えやすくなります。

かつては、子どもが複数いる家庭が一般的でしたが、現在では子1人、あるいは子どもがいない世帯も珍しくありません。
この構造が続く限り、相続税の対象は自然と広がっていきます。

税率引き上げは現実的か

相続税の将来を考えると、「税率が引き上げられるのではないか」と不安に思う方もいるでしょう。
ただし、現時点では、税率そのものを大きく引き上げる可能性は高くありません。

現在の最高税率は55%で、国際的に見ても決して低い水準ではありません。
過去には70%を超える時代もありましたが、これ以上の引き上げは、国民的な反発を招く可能性が高いと考えられます。

そのため、今後の見直しは、税率よりも「対象範囲」や「評価方法」に重点が置かれる可能性が高いと言えます。

基礎控除はさらに下がるのか

基礎控除についても、関心が高いテーマです。
2015年の引き下げによって、課税対象は大きく広がりましたが、これ以上の縮小は慎重に判断されると考えられます。

ただし、物価や地価が上昇しても、基礎控除が据え置かれたままであれば、実質的には課税が強化されることになります。
この意味では、制度を変えなくても、結果的に負担が増える可能性があります。

評価ルールの見直しは続く

相続税を巡る今後の改正で、最も現実的なのが評価ルールの見直しです。
タワーマンションの評価見直しに見られるように、実勢価格との乖離が大きい部分は、今後も修正されていく可能性があります。

これは、税収確保というより、負担の公平性を保つための動きです。
形式的な節税が難しくなり、「実質に近い評価」が重視される流れは続くと考えられます。

他の資産課税との役割分担

将来の税制を考えるうえで、相続税単独ではなく、他の資産課税との関係も重要になります。
金融所得課税や固定資産税など、資産に関連する税は複数存在します。

相続税は「一生に一度」の課税であるのに対し、他の税は継続的に負担が生じます。
どの税で、どの段階で負担を求めるのかという役割分担が、今後の政策課題になります。

相続税が果たし続ける役割

少子高齢化が進み、社会保障費の増加が避けられない中で、相続税は引き続き重要な財源であり続けると考えられます。
特に、支払い能力のある層から、社会全体を支えるための負担を求める仕組みとしての役割は、今後も維持される可能性が高いでしょう。

一方で、相続税の負担感が強まりすぎれば、国民の納得感が損なわれます。
制度の持続性を保つためには、丁寧な説明と段階的な調整が欠かせません。

結論

相続税は、今後も「大きく姿を変える」というより、「静かに影響範囲を広げていく」税制である可能性が高いと言えます。
少子高齢化と資産集中という構造が続く限り、その役割は簡単にはなくなりません。

不安を感じる必要はありませんが、「昔の感覚のまま」では対応できない時代になっています。
相続税の行方を知ることは、自分や家族の将来を考えるうえで、欠かせない視点になりつつあります。

参考

・日本経済新聞「大相続時代、広がる課税の裾野」(2025年12月16日朝刊)
・日本総合研究所 相続資産推計
・財務省 税制調査会資料
・国税庁 相続税統計


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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