少額から始められる上場投資信託(ETF)は、投資初心者から経験者まで幅広い層に利用が広がっています。特に成長投資枠が活用できるNISA制度の浸透により、リアルタイムで売買できるETFは投資手段として再評価されつつあります。低コストで分散投資がしやすく、世界の株式や債券、金など多様な資産にアクセスできる点も魅力です。
一方で、ETFには公募投資信託とは異なる特徴があります。それらを理解しないまま投資すると、意図しないリスクを抱える可能性もあります。今回はETFの基本、メリット、注意点、そして活用方法についてわかりやすく整理します。
1 ETFとは何か
ETF(Exchange Traded Fund)は、株式と同じように証券取引所に上場している投資信託の一種です。株式と同様にリアルタイムで売買できる点が最大の特徴です。
通常の投資信託は1日に1度だけ決まる基準価額で取引しますが、ETFは市場の値動きに合わせて価格が常に変動します。指し値注文や成行注文など、株式取引と同様の注文方法が使えるため、相場急変時にも機動的に対応できます。
2 低コストで高い分散効果
ETFの大きな魅力は低コストであることです。販売会社の取り分がないため、信託報酬は通常の投資信託より安く設定される傾向があります。
・非上場のアクティブ投信:平均1.08%
・非上場のインデックス投信:平均0.34%
・ETF(アクティブ型含む):平均0.29%
・インデックス型ETF:0.1%未満の商品も多数
長期投資では信託報酬の差が積み上がるため、低コストは運用効率に直結します。
また、多くの資産クラスをカバーするETFが上場しているため、世界株式、米国株式、日本株式、債券、不動産、ゴールドなどを組み合わせることで、簡単に国際分散投資が可能です。
3 ETFの上手な選び方
ETF選びの基本は「中核資産」と「補完資産」を分ける考え方です。
中核資産(コア)
・世界株式(例:MSCI ACWIなど)
・米国株式(例:S&P500)
・日本株式(TOPIXなど)
補完資産(サテライト)
・高配当株
・アクティブ型ETF
・ゴールドなどのコモディティ
・特定テーマやセクターETF
中核部分で市場全体の成長を取り込みつつ、補完部分で自分の関心やリスク許容度に合わせた分散のアクセントを加えます。
相場が大きく下落した場面では、余裕資金でインデックス型ETFを買い増すなど、リアルタイム取引の強みを生かした運用も可能です。
4 注意すべきETF
すべてのETFが長期投資向けというわけではありません。特に次のようなETFは初心者には向きません。
・レバレッジ型(指数の2倍など)
・インバース型(指数と逆の値動き)
これらは価格変動が激しく、長期保有で想定外の動きになることがあります。短期売買向けの商品であることを理解することが重要です。
5 ETFの注意点(投資信託との違い)
ETFは魅力的な一方で、公募投信と比べた際の注意点もあります。
① 分配金が自動再投資されない
ETFの分配金は自動的に再投資されず、受け取るだけで終わります。複利効果を最大化したい人は、手動で買い増しをする必要があります。
② 定額積立がしにくい
ETFは「口数」で買うため、投資信託のように「毎月1万円」という積立が難しい面があります。
証券会社によっては積立サービスがありますが、対象銘柄が限定的で、基本は自分で買付けタイミングを決めることになります。
③ 価格の乖離に注意
市場価格が基準価額から乖離することがあります。流動性が低いETFほど価格が歪むことがあります。
結論
ETFは低コストで分散効果が高く、リアルタイムで機動的に売買できる優れた投資手段です。NISAとの相性も良く、長期積立の中心に据えることも、補完的に活用することもできます。
ただし、公募投信とは仕組みが異なり、分配金の再投資や積立のしやすさなどでデメリットも存在します。自分の投資スタイルや管理のしやすさを踏まえ、少額から試しながら慣れていくのがおすすめです。
ETFは万能ではありませんが、その特徴を理解すれば、資産形成にとって大きな味方になります。
出典
・日本経済新聞「ETF、機動的に売買」(2025/11/29 朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

