リバースモーゲージがシニア世代の資金戦略として注目を集めています。
住み替え、リフォーム、借換え、生活資金——用途は幅広く、老後の生活を支える選択肢として利活用が進んでいます。
しかし、リバースモーゲージと一口に言っても、住宅金融支援機構の商品(リ・バース60)と民間金融機関の商品では、仕組みやリスクが大きく異なります。
本稿では、リバースモーゲージを検討する際に必ず押さえておくべき「制度比較」と「選び方」を整理します。
1 代表的なリバースモーゲージの種類
リバースモーゲージは、大きく次の2種類に分類できます。
- 住宅金融支援機構の【リ・バース60】
- 民間金融機関のリバースモーゲージ
それぞれの特徴を比較してみましょう。
2 【リ・バース60】の特徴
リ・バース60は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する制度です。
■ 特徴
- 元金返済は死亡時の一括返済
- 利息のみ毎月支払う
- 住宅ローンに近い枠組み
- 用途は「住まいに関する資金」に限定
(住み替え、注文住宅、リフォーム、借換え、サービス付き高齢者住宅の入居一時金など) - 担保は新居の不動産
■ 利用者データ(2024年度)
- 平均年齢:69.5歳
- 平均融資額:約1,667万円
- 主な用途:注文住宅(33%)、リフォーム(24%)、借換え(15%)
■ メリット
- 公的制度に近い枠組みで安心性が高い
- 用途が明確で、住宅資金として計画に組み込みやすい
- マンションも対象になる
■ デメリット
- 借入限度額が評価額により抑えられる
- 生活資金には利用できない
- 金利は変動型が中心(将来の上昇リスク)
3 民間金融機関のリバースモーゲージ
銀行や信用金庫など、各社が独自のリバースモーゲージを提供しています。
■ 特徴
- 用途が広い(生活資金、医療費、介護費に使えることも)
- 不動産評価の基準が機構より柔軟な場合がある
- 金利は変動型が中心
■ メリット
- 資金用途が幅広い
- 借入上限額が比較的高い商品がある
- 自宅に住み続けながら融資を受けられる
■ デメリット
- 金利が機構より高めの傾向
- 商品によってはノンリコースでない(相続人の負担が生じ得る)
- 将来の金利上昇リスクが大きい
- 担保評価が厳しく、都市部以外では借りにくいケースもある
4 【比較表】リ・バース60と民間商品の違い(文章版)
| 比較項目 | リ・バース60 | 民間商品 |
|---|---|---|
| 用途 | 住宅関連に限定 | 生活資金など広い |
| 金利 | 変動型中心(低め) | 変動型中心(高め) |
| 担保評価 | 住宅金融支援機構基準 | 金融機関ごとに異なる |
| 融資額 | 控えめ | 高額のケースもあり |
| 相続時の取扱い | ノンリコース型が多い | 商品により異なる |
| 利用ハードル | 手続きが丁寧・安全性高い | 幅広いがリスクも高い |
5 どの制度を選ぶべきか
リバースモーゲージは「借金」であり、老後の生活に密接に関わる制度のため、安易に選ぶべきではありません。
判断のポイントは次の3つです。
(1)資金用途
- 住まいの資金 → リ・バース60が適する
- 生活費・介護費にも使いたい → 民間商品の検討が必要
(2)相続人の意向
- 家を残したい意向が強い → 避けるか慎重に
- 子どもが相続を希望しない → 有効な選択肢になり得る
(3)金利上昇リスクに耐えられるか
- 金利上昇時の利払額が生活に影響しないか
- 長寿化(90〜100歳)を前提とした試算が必要
6 FPとしてのサポートポイント
リバースモーゲージは、
- 住宅
- 金融
- 相続
- 家族関係
- 介護・医療
の複合領域にわたる高度な相談テーマです。
FPとしては、
- 100歳までのキャッシュフローシミュレーション
- 金利上昇時の負担試算
- 相続人の意向を踏まえた合意形成
- 任意後見契約などの法的備え
まで含めた総合的支援が求められます。
結論
リバースモーゲージは、老後の生活を支える有力な資金調達方法ですが、適切な制度選択と長期的なリスク管理が欠かせません。
「自宅を活かしながら資金を得る」というメリットは大きい一方、金利上昇や相続リスクなどの注意点も存在します。
自分に合った制度を選ぶためには、資金用途・家族構成・価値観・健康状態など、さまざまな要素を丁寧に整理する必要があります。
専門家とともに、無理のない安心できる資金戦略を立てていくことが重要です。
出典
・住宅金融支援機構「リ・バース60」
・日本FP協会「リバースモーゲージ活用に関する解説資料」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
