シニア世代の住み替えは、単に「家を変える」だけでなく、費用面での十分な準備が欠かせません。
「売却・購入の費用はいくら必要なのか」「どのタイミングで支払いが発生するのか」「老後資金が圧迫されないか」など、検討すべきポイントは思った以上に多いものです。
今回の第2回では、シニア世代が住み替えを検討する際に押さえておきたい「実務としての費用項目と注意点」について、専門家視点で整理します。
1 売却時にかかる費用
自宅売却には、一般的に次の費用が発生します。
(1)仲介手数料
仲介手数料は売却価格の3%+6万円(+消費税)が上限です。
例:3,000万円で売った場合
→ 仲介手数料:96万円+消費税
(2)測量費・解体費(必要に応じて)
・境界が不明確な土地の場合は測量費
・古家付き土地として売る場合は解体費
地域によって差がありますが、いずれも数十万円〜100万円超になることがあります。
(3)抵当権抹消費用
住宅ローンが残っている場合、1〜3万円程度の実費がかかります。
(4)譲渡所得税
売却により利益が出る場合、譲渡所得税が発生することがあります。
ただし「マイホームの3,000万円特別控除」が適用できるケースが多く、実際には税額がゼロとなるシニアの方もよく見られます。
2 購入時にかかる費用
思った以上に大きな金額となるため、事前把握が重要です。
(1)購入時の諸費用(新築・中古共通)
一般的には物件価格の5〜10%程度。
主な内容は次のとおりです。
- 仲介手数料(中古購入の場合)
- 登録免許税・司法書士報酬
- 火災保険料・地震保険料
- 固定資産税の精算金
- ローン手数料(リバースモーゲージの場合にも発生)
マンションの場合は、管理費・修繕積立金の負担増にも注意が必要です。
(2)引っ越し費用
家財量の多いシニア世帯では、20〜40万円となるケースが珍しくありません。
家財整理・不用品回収には追加費用がかかる場合もあります。
(3)リフォーム費用
中古マンションを購入する場合、50〜200万円ほどのリフォームを施すケースが一般的です。
・段差解消
・手すり設置
・浴室改修(バリアフリー対応)
など「老後の安全性」を意識した工事が多くみられます。
3 「住み替えの支払いタイミング」を理解する
シニア世代の住み替えでトラブルが多いのが、支払いのタイミングです。
【代表的な例】
・新居購入の決済日が先
・売却代金の入金が後
このような「資金の前後関係のズレ」が生じ、手元資金が一時的に不足することがあります。
そのため、
- つなぎ融資
- リバースモーゲージ併用
- 定期預金の一時解約
など、資金手当の計画が重要です。
4 老後資金とのバランスを崩さない
住み替えは人生の大きな支出イベントです。
シニア世代の場合、購入費用に資金を使いすぎてしまうと、生活費・医療費・介護費などが圧迫されかねません。
FPとしては、
- 90〜100歳までのキャッシュフロー表
- 医療・介護費の増加予測
- 将来の修繕費の見込み
を踏まえた長期的な資金計画が必須です。
結論
住み替えの費用には、売却・購入に伴う諸費用だけでなく、引っ越し、リフォーム、修繕費、税金など、さまざまな項目があります。
さらに、それらの支払いタイミングが異なるため、資金の流れを正確に把握し、老後資金を圧迫しないプランを組むことが極めて重要です。
シニア世代の住み替えは、住宅だけでなく、資金・健康・介護・家族の意向を総合的に考えるプロセスといえます。専門家の助言を得ながら、無理のない安心できる住まい方を選択しましょう。
出典
・住宅金融支援機構「シニア向け住宅資金制度」
・国土交通省「不動産取引のルール」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
