学び直しの時代へ:大学改革が示す「主体的な学び」のヒント

FP
ブルー ベージュ ミニマル note ブログアイキャッチ - 1

大学で学ぶ学生たちの間で、学期内の対面授業の期間を短くし、オンデマンド授業を活用する動きが広がっています。東洋大学、関西学院大学、同志社大学などが先進的に導入し、授業のコマ数を維持しながら「学生の自己研さんの時間」を拡大する試みです。

学び方が大きく変化する中で、社会人の学び直し(リスキリング)を考える私たちにも示唆が多くあります。増えた時間をどう活かすのか。学びの質をどう高めるのか。大学の制度改革を素材に、「主体的に学び続ける力」の重要性を考えていきます。

1 大学で進む“学びの構造変化”

近年、大学では対面授業の期間を短縮し、オンラインやオンデマンド授業を組み合わせる取り組みが増えています。

  • 東洋大学:学期15週→13週へ。2回分をオンデマンドや学外実習にあてる。
  • 関西学院大学:対面14週→12週へ。1コマ時間も100分→90分に短縮し、昼休みを1時間確保。
  • 同志社大学:すでに13週+オンデマンド2回を導入。授業の工夫が進んでいる。

背景には、コロナ禍でオンライン授業が普及した経験があります。オンデマンド授業は「好きなときに視聴でき、繰り返し学べる」という利点があり、日本語に不慣れな留学生や、部活動で忙しい学生にも受け入れられています。

2 制度改革の本当の狙い

今回の改革には共通する目的があります。

  • 学生が自己研さんに使える時間を増やすこと
    海外留学、インターンシップ、学外活動への参加、集中講義による学習など、学期が短くなることで挑戦しやすくなります。
  • 教員の負担軽減と研究時間の確保
    授業準備だけでなく、学外業務や研究活動の時間が圧迫されてきた大学教員にとって、学期短縮は負担軽減にもつながります。
  • 柔軟な学び方への転換
    「教室に集まり、一定のペースで進む授業」から「学ぶ側が時間と場所を選び、自ら学習計画を立てる授業」への変化を促す改革です。

これは単なる授業回数の話ではなく、学習者主体の学び方へ舵を切るものです。

3 学生が抱える課題:時間をどう使うか

ただし、増えた時間をどう活用するかは学生次第です。

  • 留学や専門分野への挑戦に使う学生
  • 旅行やアルバイトへ流れる学生
  • 漠然と過ごしてしまう学生

意識の差は大きく、そのまま学習効果の差として現れます。大学側も制度を作るだけでは不十分で、「学びの重要性」をどれだけ周知できるかが課題になります。

大学関係者も指摘するように、改革の成否は 「主体的に学ぶ姿勢を持つ学生をどれだけ増やせるか」 にかかっています。

4 社会人の“学び直し”にも同じ構造がある

この大学の動きは、社会人が学び直しを進めるうえでも示唆に富んでいます。

社会人の学び直しがうまくいかない理由として、次のような「大学と同じ構造」が見られます。

  1. 学ぶ時間を確保しても、その時間をどう使うかで結果が変わる
    せっかく確保した学習時間が、スマホや雑務で消えることは珍しくありません。
  2. オンデマンド学習は便利だが“主体性”がなければ続かない
    視聴するだけで満足する「聞いただけ学習」になりやすく、知識として定着しにくい面があります。
  3. 目的があいまいだと学びが続かない
    「とりあえず資格」「とりあえずAI」という学び方では成果が出にくいのは大学でも社会人でも同じです。
  4. 周囲の環境が学びの継続を左右する
    職場の支援、学習コミュニティ、評価制度など、外部環境も継続の鍵になります。

つまり、 大学の学び方改革=社会人学び直しの縮図 です。

5 リスキリング時代の“学びの設計”

大学の事例から、社会人の学び直しに応用できるポイントを整理しておきます。

(1)学びのゴールを決める
・資格取得
・キャリアチェンジ
・将来に備えた金融・税務知識
・AIリテラシーやデジタルスキル
目的を明確にすることで、自分に必要な時間と教材が見えてきます。

(2)オンデマンド学習を「復習用」に位置づける
大学でも「何度でも見られる」点が評価されています。
社会人も、オンライン講座は 理解→復習→実践 のループで使うことが大切です。

(3)学ぶ時間を“予定に組み込む”
時間をもらえるだけでは学びは進みません。
予定表の中に「学ぶ時間」を固定で入れてしまうのが有効です。

(4)得た知識を「現場」で使う
インターンや学外活動による実践が重視されているように、社会人も学びはアウトプットで深まります。
業務改善、資料作成、職場提案など、小さくても現場に落とし込むことが重要です。

(5)学び続ける“環境と仲間”を作る
大学でもコミュニティ形成は重要なテーマです。
社会人も同じで、オンライン勉強会や専門コミュニティに参加するだけでも継続率は段違いに高まります。

結論

大学が進めている学年暦改革は、授業時間を短くすることが目的ではありません。学生が自ら動き、多様な学びの機会に挑めるようにするための改革です。

これはそのまま、社会人の学び直しにも当てはまります。

  • 時間をつくるだけでは成果は出ない
  • 主体性がないと学びは深まらない
  • 学び方の設計が成果の差を生む

人生100年時代、学びは一度きりではなく、何度も更新するものです。大学の挑戦は、社会人にとっても「学び直しのヒント」に満ちています。
自分のキャリアの未来を見据えて、今日からできる小さな一歩を積み重ねていくことが、長い目で見て最も大きな力になります。

出典

・日本経済新聞「東洋大、自己研さんに重点 オンデマンドで対面授業短く」
・日本経済新聞「改革の効果最大化へ、『学び』の意識醸成を」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました