70歳まで働く時代になると、家計と年金の扱い方もこれまでとは大きく変わります。
「年金だけでは足りないから働く」のではなく、
働くこと・年金制度・家計管理を組み合わせて“安心して暮らし続ける”
ことが重要になります。
シニアの家計は、現役時代とは異なるリスク構造になります。
この記事では、60代後半〜70代の家計管理で押さえておくべきポイントを、年金制度、働き方、生活設計の観点からわかりやすく整理します。
1.シニア家計で最も重要な原則
シニアの家計で最大のリスクは「収入の減少」ではなく、
支出のブレと医療・介護費の不確実性です。
そのため、以下の3点が家計の土台になります。
- ① 生活費の固定化(支出の見える化)
- ② 働き方と年金の組み合わせ
- ③ 万一の医療・介護リスクへの備え
収支バランスを「現役時代の感覚」で考えると誤ります。
70代以降は“支出の安定化”が最も重要です。
2.70歳以降の収入は「働く+年金」で考える
現在のシニアの家計は、次の3本柱で成り立っています。
●(1)公的年金
日本の年金制度は「働きながら受け取る」前提で制度が再設計されています。
受給開始年齢は60〜75歳の間で選択可能で、繰り下げ受給なら1カ月0.7%増額されます。
例:
65歳→70歳に繰り下げると、42%増。
働き続けられる人ほど年金の自由度が高くなります。
●(2)就労収入(パート・短時間・週3など)
70代の働き方は多様で、
- 週3日
- 1日4〜6時間
- 事務・接客・地域サポート
- 在宅と出勤の組み合わせ
など、負担を抑えた働き方を選びやすくなっています。
働くことで得られるのは収入だけではありません。
- 健康維持
- 社会とのつながり
- 認知症予防
- 生活のリズム維持
といった“見えない資産”も増えます。
●(3)資産収入(貯蓄・NISA・預金・賃貸収入など)
生活の安定には、
- 年金
- 就労
- 少額の資産取り崩し
を組み合わせることが長期的な安全につながります。
ポイントは「取り崩しすぎない」ことです。
年数あたりの取り崩しの目安としては、
年間2〜3%以内が望ましいとされています。
3.家計の支出管理 ― 「固定費の軽さ」が安心につながる
シニア家計は、“いくら稼ぐか”よりも、“いくら使うか”が家計の安定を左右します。
●(1)住居費
持ち家でも固定資産税・修繕費が発生します。
賃貸なら家賃の見直しも重要です。
●(2)通信費
月数千円の差が年単位の負担につながるため、格安プランの見直しは有効です。
●(3)保険
現役時代のままの保険は過大なケースが多く、見直しタイミングとして最適です。
- 医療保険の重複
- 高額な終身保険
- 不要な特約
などの“ムダ保険”を整理できます。
●(4)車
車は固定費の中でも最も重く、
- 維持費
- 車検
- 任意保険
- 税金
- ガソリン代
など合計で月2〜3万円以上が一般的です。
必要性の再考が大きな節約効果を生みます。
4.医療・介護リスクへの備え
シニアの家計を揺るがす最大の不確実性は、「医療・介護費」です。
●(1)医療費
日本の医療保険制度は手厚い仕組みのため、
高額療養費制度が大きな“安全網”です。
月額の自己負担には上限があります。
したがって過大な医療保険は不要になりがちです。
●(2)介護
介護費用は“平均”より“ばらつき”が大きい分野です。
備えるべきは以下の3つ:
- 貯蓄の取り崩しルール(2〜3%以内)
- 公的介護サービスの理解
- 在宅・施設の選択肢を家族で共有
介護保険サービスを最大限活用すれば、家計への負担は大きく減ります。
5.働き続けるメリットは「収入」よりも「生活の質」
働き続けることで得られる効果は、収入以上に大きいものがあります。
- 認知症リスクの低減
- 社会的つながりの維持
- 心身の健康
- 生活のリズム
- 精神的な安定
- 自己肯定感の維持
70代の暮らしの安定には、働くこと自体が“健康投資”となります。
6.シニア家計でやってはいけない3つのこと
以下の行動は家計を崩しやすい典型例です。
●(1)収入が減ったからといって「節約だけ」に走る
必要な支出まで削ると健康を損ね、医療費増につながることがあります。
●(2)保険を“現役時代のまま”持ち続ける
保険の重複や過大契約はよくあるミスです。
●(3)資産を“怖いから使わない”
資産は適度に使うことで生活の質が維持されます。
取り崩し過ぎは良くないですが、“使わない”も逆に失敗です。
結論
シニアの家計・年金は、
- 働き方
- 年金制度
- 支出管理
- 医療・介護リスク対策
を組み合わせて設計すると、最も安定します。
70歳まで働くことが当たり前になった今、
家計も「長く働く前提」で組み直す必要があります。
大切なのは、
“いくら稼ぐか”ではなく、“どう暮らすか”。
年金・就労・資産・生活習慣のすべてが連動したとき、
シニアの家計は最も安定し、人生はより充実したものになります。
出典
- 厚生労働省「年金制度関連資料」
- 日本経済新聞「〈ライフスタイル シニア〉働く『アラ古希』悩みは…」
- 金融庁・総務省家計調査
- 内閣府・高齢社会白書
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
