シリーズ:アラウンド古希の働き方 シニア雇用の未来 ― AI・DX時代に必要なスキルと働き方編(第5回)「AIが苦手」はもう言えない。70歳以降の働き方を広げるデジタル活用とは

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AIやデジタル技術の進展は、働き方そのものを大きく変えています。若い世代だけでなく、シニアの働き方にも大きな影響を与えています。「AIが仕事を奪う」といった不安の声もありますが、実際にはシニアの働き方を支え、負担を減らし、事故リスクを小さくする味方にもなり得ます。

70歳以降も働き続ける時代において、AI・DXとどう向き合うかは、キャリアの持続可能性を決める重要なテーマです。
この記事では、デジタルが苦手だと感じるシニアでも取り入れやすい現実的な活用方法と、これから必要となるスキルをわかりやすく整理します。

1.AI・DXは「シニアを置き去りにする技術」ではない

AI・デジタル化は“若い人向け”のものだと考えがちですが、実際にはシニアの働きやすさを高める力を持っています。

  • 無線の声が聞き取りづらい → 音声文字化アプリで補助
  • 文書作成が苦手 → 生成AIで文章を下書き
  • 重い荷物で負担が大きい → 自動台車・省力化機器が支援
  • ミスが不安 → チェック作業をAIが補助

AIやDXは「シニアの弱みを補い、強みを活かす」技術なのです。


2.シニアに求められるのは“専門技術”よりも“変化になじむ力”

AI時代に必要と言われるスキルというと、「高度なITスキル」を想像しがちですが、実際に重要なのは次の3つだけです。

(1)最低限のデジタルリテラシー

  • スマートフォンの基本操作
  • メール・チャットアプリの操作
  • 簡単な検索
  • オンラインでの資料確認

これだけで、ほとんどの業務は対応できます。


(2)AIと共存するための“質問力”

生成AIは、「上手に聞く人」が最も使いこなせる時代です。

  • わからない言葉をAIに聞く
  • 文書の下書きを作ってもらう
  • 伝えたい内容を整理してもらう
  • 会議内容を要約してもらう

AIを使うには“専門知識”よりも“聞き方”のスキルが重要です。


(3)業務を“整理して伝える力”

AIや後輩に仕事を任せるには、
「作業の流れをわかりやすく伝える」能力が求められます。

これは長年の経験をもつシニアが最も得意とする分野であり、AI時代の強力な武器になります。


3.70歳以降の働き方を広げるAI・DX活用例

ここでは、シニアが無理なく活用できる現実的なツールを紹介します。


(1)音声文字化アプリで“聞こえにくさ”を補う

会議の声が聞き取りづらい、無線が聞こえにくい……
そんな場面では音声をリアルタイムで文字に変換するアプリが役立ちます。

  • スマホを机に置くだけで、会話が文字化
  • 相手の説明を逃さない
  • 無理に聞き返すストレスが減る

聴力が落ちても、仕事の質を維持できます。


(2)生成AIで文書作成・資料整理

例えば、

  • メール文章
  • 報告書の下書き
  • 会議録の要約
  • お客様への説明文

これらは全部AIで“たたき台”を作ることができます。
シニアは内容チェックと修正に集中するだけで良くなり、大幅な負担軽減になります。


(3)省力化機器で「事故」を防ぐ

  • 自動台車
  • 重量物リフト
  • 音声ガイド付き作業支援
  • スマートグラスによる遠隔サポート

視力・筋力・反応速度の低下は技術で補うことが可能です。
事故リスクが大幅に下がり、働ける期間も延びます。


(4)デジタルを活用した在宅×出勤のハイブリッド勤務

  • 出勤:接客・打ち合わせ
  • 在宅:入力作業・報告書作成・電話対応

身体への負担を抑えながら、シニアの経験を活かせる働き方がしやすくなります。


4.企業側に求められる“シニア×AI”の活用支援

AI時代のシニア活躍には、企業側のサポートも欠かせません。

(1)シニア向け“やさしい”デジタル研修

専門用語ではなく、

  • 「業務でどこに使うか」
  • 「日常でどう便利になるか」
    に焦点を当てた研修が必須です。

(2)マニュアルの簡素化・動画化

文章だけでは理解が難しい部分があるため、

  • 短い動画
  • 図で示したマニュアル
  • 実演型のOJT
    など「視覚で理解できる」工夫が求められます。

(3)AIツールの導入目的を明確にする

AI導入は「人を減らす」ためではなく、
“シニアを含む従業員の負担を減らし、安全性を高めるため”
というメッセージが大切です。


(4)若手との協働モデルをつくる

  • シニア:経験・判断
  • 若手:IT活用・スピード
  • AI:情報処理・効率化

この三者が補完し合うことで、組織の生産性は飛躍的に高まります。


結論

AIやDXは、シニアの働き方を奪うものではなく、むしろ働き続けるための“補助エンジン”です。
大切なのは、難しい技術を理解することではなく、「必要な場面で、便利に使う」姿勢です。

シニアの強みである

  • 経験
  • コミュニケーション力
  • トラブル対応力
  • 業務理解
    はAI時代にこそ価値が増していきます。

70歳以降の働き方は、デジタルを味方につけることで、
「無理なく、長く、安心して働ける未来」へと広がります。


出典

  • 日本経済新聞「〈ライフスタイル シニア〉働く『アラ古希』悩みは…」
  • 日本経済新聞「70歳までの雇用、努力義務」
  • 各種AI・DX導入企業の公開事例

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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