8月17日(日)の日経新聞で、「与野党、法人増税論が浮上」という記事が載っていましたね。
今回は、法人税増税について、企業と家計に与える影響を考えてみます。
1. なぜ今、法人増税なのか?
最近、与野党の双方から「法人増税」をめぐる議論が活発化しています。
背景には…
・防衛費・社会保障費の増大
・少子高齢化による財政患化
・国際的な税制潮流(グローバル・ミニマム課税)
などがあり、財源確保のため「法人税を再び引き上げるべきではないか」という声が出ているのです。
かつて日本の法人税率は40%を超えていましたが、国際競争力の観点から段階的に引き下げられ、現在は約29.7%(地方税含む実効税率)。この低下は投資促進の効果がある一方、国の税収基盤は脆弱になりました。
2.与党の立場
与党内では…
・「大企業を中心に負担を求めるべき」
・「防衛費や社会保障財源を安定化させるため不可欠」
という声が上がっています。
ただし同時に、国際競争力低下や企業の海外移転を懸念する意見も根強く、増税対象や幅をどう調整するかが大きな論点となっています。
3.野党の立場
野党は…
・格差是正の観点から法人課税強化に前向き
・特に大企業や内部留保の多い企業に重点を置くべきと主張しています。
一方、中小企業への増税は雇用や賃上げの妨げになるため、対象をどう絞るかが焦点です。
4. 企業・家計への影響
法人税増税は、直接的には企業負担の増加ですが、最終的には次の形で私たちの生活にも波及します。
・賃金抑制:企業が人件費に回せる余力が減少する可能性
・価格転嫁:商品・サービス価格に反映され、家計負担増につながる
・投資抑制:企業の設備投資が鈍化すれば、経済成長の足かせに
・株主への影響:法人税負担増は利益を押し下げ、配当や株価に影響
つまり「法人税=企業の問題」ではなく、国民一人ひとりに跳ね返ってくる税制改正です。
5.注目したい点
税理士・FPという立場で注目したいのは、次の2点です。
①中小企業経営者の戦略
法人税率の上昇は、中小企業にとって「節税策の再構築」を迫られる可能性があります。
役員報酬の配分、経費計上の見直し、さらには法人化・個人事業の選択を再考する動きも出てくるでしょう。
②投資家・個人の資産形成
法人税引き上げは企業収益の減少を通じて株式市場に影響します。
長期投資家は、増税が「どの業種にどの程度の影響を与えるか」を冷静に見極める必要があります。
6.今後の展望とまとめ
与野党の間で「法人増税」は一致しつつも、その対象範囲・増税幅・中小企業への配慮をどう設計するかは今後の政治課題です。
国際的な法人税引き上げの流れもあり、日本でもいずれ何らかの形で実施される可能性は高いでしょう。
私たちとしては、
・経営者は「法人税率変動を前提にした経営計画」を
・投資家や家計は「増税による企業収益の変化」を常に意識する必要があります。
税制は政治と経済の鏡です。
今後の法人増税論議から目を離さず、早めに備えることが肝心ですね。
ということで、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いいたします。

