コンビニ経営は「売上重視」から「利益重視」へ ー本部の会計刷新がもたらす新しい店舗運営モデル 

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コンビニ業界で、店舗運営のあり方が大きく変わりつつあります。水道光熱費や人件費の上昇が続くなか、売上を増やすだけでは収益を確保しにくい構造が鮮明になりました。こうした状況を踏まえ、ファミリーマートをはじめ大手3社は「売上重視」から「利益重視」へと舵を切り始めています。

特にファミリーマートが導入した新しい会計管理の仕組みは、フランチャイズ店舗の経営の見え方を大きく変える取り組みです。本部と加盟店が一体となって利益改善に向けた取り組みを進める姿勢が明確になってきました。

本記事では、この新たな動きを一般の方にも分かりやすく整理し、コンビニ経営に何が起きているのか、その背景と今後の方向性を解説します。

1. ファミリーマートが会計システムを20年ぶりに刷新

ファミリーマートは、加盟店の会計を本部側で一括管理する新しい仕組みを導入しました。本部社員であるスーパーバイザー(SV)が、全国約1万6000店それぞれの損益計算書(PL)を把握できるようになり、店舗ごとの利益状況を踏まえた経営改善が可能になります。

従来のSVは「売上の伸ばし方」に重点を置き、販売データや販促支援を中心とする指導が主な役割でした。しかし、売上が伸びても電気代や人件費が別に膨らみ、利益が増えないケースも多くあります。会計情報の可視化によって、より根本的な「稼ぐ店づくり」が本部の指導に組み込まれました。


2. 電気代・人件費の高騰が加盟店経営を圧迫

コンビニ経営において、水道光熱費やアルバイト人件費は大きな負担です。物価上昇が続くなか、既存店売上高は各社とも前年同月比でプラスを維持しているものの、上昇率は3%前後の物価上昇に追いついていません。

  • ファミリーマート:+1.6%
  • ローソン:+2.2%
  • セブン-イレブン:+1.3%

売上が伸びても経費上昇が吸収できない構造が続けば、特に高齢化しつつあるオーナーにとって事業継続はますます難しくなります。


3. 本部による「利益改善指導」が本格化

ファミリーマートのSVは今後、他店との比較を用いながら、電気代の節約やアルバイト雇用の適正化など、より実務的な改善指導を行います。本部が管理する会計データには公共料金の支払情報も含まれるため、地域ごとのばらつきや改善余地も明確になります。

本部側の効率化も重要です。これまで地域ごとに管理していた会計業務を本部でまとめることで、年60%にのぼるコスト削減が見込まれています。その削減分を店舗への支援や成長投資に回すという仕組みも特徴的です。


4. ローソン:作業の標準化とAI活用で「省コスト化」

ローソンは、発注・品出し・清掃など店内作業を「何を・いつ・どのくらいの時間で」行うかをまとめたワークスケジュールを作成し、作業手順を標準化しました。店ごとに作業効率が大きく異なる状態を是正する狙いがあります。

また、AIによる値引き率の自動提案を導入し、廃棄ロスを削減することで利益率を高めています。今後は揚げ物といった店内調理品にもAI提案を広げるなど、省人化と利益改善の両面に取り組んでいます。


5. セブン-イレブン:経営指導料の引き下げとロボット導入

セブン‐イレブンは、新規オーナーから受け取る経営指導料を2027年度にも引き下げる方向です。最大5年間の減額を検討しており、オーナーの負担軽減につながります。

さらに、セルフレジに加えて、清掃や商品補充を担うロボットの導入も進め、省人化とコスト抑制を両立させる体制づくりを進めています。


6. 「売上重視」から「利益重視」への構造転換

コンビニ業界は長年、1店舗あたりの1日の売上高(平均日販)を重要指標としてきました。売上が伸びるほどオーナーのやりがいや収入にもつながり、店舗数拡大のエンジンとなってきました。

しかし、物価や人件費が上昇する現在では、売上を増やしても利益が残りにくい状況が続いています。このため、3社とも「売上競争」から「安定して収益を出す店づくり」へと方針を転換しています。

この流れは今後ますます強まるとみられ、コンビニ経営全体が新たなステージに向かっているといえます。


結論

コンビニ業界では、上昇し続ける経費とオーナーの高齢化という構造的な課題に対応するため、本部主導の利益改善モデルへの移行が加速しています。会計データを本部が一元管理し、収益性を軸にした店舗指導を行うファミリーマートの取り組みは、その象徴的な動きといえます。

他社でもAIやロボット、省人化設備の導入、経営指導料の見直しなど、オーナーの負担軽減と安定した収益確保をめざす取り組みが広がっています。

コンビニが地域インフラとしての役割を保っていくためには、「売上を追う時代」から「利益を確保する時代」への転換が避けられません。今回の動きは、その大きな一歩となります。


出典

日本経済新聞「ファミマ、本部管理の会計導入」(2025年11月25日付)
ほか関連報道


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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