AIと雇用 第2回:AIが変える仕事の中身 ― 代替されるのは「職種」ではなく「タスク」

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AIが急速に進化する中で、「事務職が消える」「エンジニアが不要になる」といった言説が目につくようになりました。しかし、実際のAI研究者・IT企業トップが口を揃えて語るのは、“AIが置き換えるのは職種ではなく、仕事を構成するタスクの一部にすぎない”という事実です。

本記事では、「AIは具体的に何を代替し、何を代替できないのか」を整理し、AI時代の働き方のリアルに迫ります。

1. 仕事は小さなタスクの組み合わせでできている

「営業」「経理」「プログラマー」といった職種の名前は馴染みがありますが、実際の仕事は細かなタスクの集合体です。

  • 情報収集
  • 文書作成
  • 社内調整
  • 客先との対話
  • 数値分析
  • 報告書作成
  • 企画の立案
  • 進捗管理

このように、1つの職種には多様なタスクが含まれています。
AIが得意とするのは、そのうちの“特定の繰り返しタスク”です。

つまり、
AIは「仕事そのもの」を奪うのではなく、「仕事に含まれる一部分」を置き換えるだけ
というのが正確な理解です。


2. AIの得意領域:言語×定型×大量処理

最新の生成AIが強みを発揮している領域は明確です。

● 文章作成

メール文、要点整理、議事録、説明文の自動生成など。

● コード生成

AI企業のデータでは、ある部門で「コードの7割」がAIによる自動生成に達した例もあります。

● 翻訳・情報検索

日本では特に、翻訳や文書のリライト用途が急速に拡大。

● 文書チェック・校正・整形

誤字脱字、文章の再構成、資料の書き直しなど。

これらは共通して
「ルール化しやすい」「大量処理に向く」「評価基準が明確」
といった特徴があります。


3. AIが苦手な領域:判断・対話・暗黙知

一方で、人間が引き続き担当する必要があるタスクも明確に存在します。

● 判断

複数の要素を比較し、状況に応じて判断する作業。

● 暗黙知

経験に基づく感覚・気づき・現場判断。

● コミュニケーション

相手の意図を汲み取り、合意形成を進める力。

● 文脈の理解

事業・人間関係・政治的配慮など“空気”を読むこと。

特に、若手がAIに質問し、先輩社員に相談しなくなることで
「職場のメンター文化が弱体化する」
という懸念も指摘されています。
AIに置き換えられない部分こそ、今後より重要になる領域です。


4. 「新人レベルの仕事が半減する」という発言の“真意”

米アンソロピックのCEOが「ホワイトカラーの新人レベルの仕事が半減する」と発言し話題になりましたが、これは「新人が不要になる」という意味ではありません。

真意は、

  • 新人が担当していた単純なタスクがAIで効率化される
  • その分、より学習効果の高い仕事に早く取り組める
  • “仕事の入口”が変わる

というものであり、教育・育成の見直しを促す意図に近いものです。


5. AI時代の人材に求められるのは「タスクの取捨選択能力」

仕事がタスク単位で再構成されていくほど、
「AIに任せる部分」と「自分でやる部分」を切り分ける力
が求められます。

重要なのは、
AIに任せられる部分はどんどん任せ、
人間にしかできない領域に集中することです。

これは、どの職種にも必要となる普遍的なスキルです。


■ 結論

AIは「職業そのもの」を奪う存在ではありません。
変化の中心は、仕事を構成するタスクの再編です。
人が担うべき領域は確実に残り、むしろAIの得意部分を任せることで、より高度で創造的な仕事に力を注ぐことができます。

AI時代に問われるのは、
どのタスクをAIに任せ、自分はどこで価値を発揮するかを見極める力
です。

次回の第3回では、「AI時代に消える仕事・残る仕事・生まれる仕事」 を具体的に整理していきます。


■ 出典

  • 日本経済新聞(2025年11月)掲載のAI・雇用関連記事
  • AI企業経営者・研究者のコメント

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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