【土地評価の落とし穴シリーズ・第8回】総集編:相続税の土地評価で“失敗しやすい”10のポイント― 過大申告・過少申告を防ぐために知っておきたい実務の要点

税理士
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全7回にわたり、相続税の土地評価で見落としやすいポイントを解説してきました。
土地評価は金額が大きく、評価を誤ると
・相続税を払いすぎる
・逆に過少申告となり追徴課税を受ける
という重大な結果を招きます。

本記事では、シリーズ全体の内容を踏まえつつ、
「相続税の土地評価で失敗しやすい10のパターン」
を一覧化して整理します。
実務の重要ポイントを一度に振り返る総集編です。

■失敗①:路線価=時価と思い込む

路線価はあくまでも「相続税のための基準」。
売買価格(時価)とはズレるのが通常です。
時価との乖離を意識しないと、過大・過少の両方のリスクがあります。


■失敗②:「利用価値が低い土地=すぐ評価減」と誤解

臭気・騒音・ごみ集積所など、生活環境の不快感だけでは評価減の要件を満たしません。
“周囲の宅地と比べて明確に取引価額に影響があるか”が重要です。


■失敗③:セットバック部分を評価に反映しない

道路後退部分は価値ゼロですが、面積の計算を誤る例が非常に多いです。
道路中心線・幅員・市区町村の道路台帳などの確認が必須です。


■失敗④:私道の持分を評価しない/逆に過大評価してしまう

私道・位置指定道路は評価が難しい分野。
利用状況・通行権・修繕負担などにより価値が大きく変わるため、持分の扱いを誤ると税額が狂います。


■失敗⑤:造成工事費控除を過剰に見積もる

高低差・崖地の評価は“必要工事費”が根拠。
専門業者の見積書なしに概算で評価減すると、税務署から否認されるケースが多く見られます。


■失敗⑥:無道路地は常に70%と誤解する

70%はあくまで基本的な目安であり、
通行権の有無・周囲の状況により、
それ以上にも以下にもなり得ます。
ルールを固定的に考えるのは危険です。


■失敗⑦:旗竿地の評価減を過大に期待する

旗竿地であっても、
・通路幅が十分
・車両の出入りが可能
・整形地に準じる利用価値
が認められれば、評価減は小さくなります。
形状だけで判断すると誤りにつながります。


■失敗⑧:借地権・底地の契約内容を確認しない

旧借地法/借地借家法のどちらが適用されるか、
更新料・承諾料の慣行、地代の水準など、
契約内容を見ずに評価するのは非常に危険。
専門家でも間違いやすい領域です。


■失敗⑨:実測図や現況を確認せず評価する

評価は図面ではなく“現況”が基本。
公図が古いまま/境界が不明確/測量していない
といった状態では、評価誤りが発生する可能性が高まります。


■失敗⑩:補正項目の重複適用にもれがある

不整形地・間口狭小・奥行価格補正などは複雑で、
「適用できるのにしていない」
「重複してはいけないものを重複している」
といったミスが多くあります。

補正の確認だけで評価額が数百万円単位で変わることもあります。


■まとめ:総合的に評価する姿勢が重要

相続税の土地評価で特に重要なのは、
単一の要素ではなく“複数の要素の組み合わせ”で価値が決まる
という点です。

  • 接道状況
  • 権利関係
  • 地形
  • 利用価値
  • 市場価格
  • 法令上の制限

これらを総合的に判断しなければ、“適正な評価額”には到達しません。

結論

土地評価は、価格の大きさと個別性の高さから、誤りが起きやすい分野です。
路線価を過信したり、形状だけで評価減を期待するのではなく、
・現地調査
・資料確認(契約書、道路台帳、測量図など)
・補正項目のチェック
を丁寧に行うことが、正しい評価につながります。

また、評価額が大きくなる土地ほど、
税理士・不動産鑑定士・土地家屋調査士など、複数専門家の意見を踏まえることが、リスク回避の観点からも有効です。

土地評価は奥が深く、落とし穴も多いですが、丁寧な確認と適切な根拠づくりにより、適正な相続税申告につながります。

出典

・国税庁「財産評価基本通達」
・国税庁「宅地の評価」関連通達
・建築基準法(道路・建築制限関連)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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