【土地評価の落とし穴シリーズ・第1回】路線価=時価ではない:相続税の土地評価で最初に知るべきこと

税理士
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相続税の土地評価では、もっとも基本となる基準が「路線価」です。相続税の相談でよく聞かれる質問のひとつに「路線価は土地の時価と同じなのですか?」というものがあります。しかし、路線価と実際の売買価格(時価)は一致するとは限りません。

この違いを正しく理解していないと、
・相続税を過大に申告してしまう
・逆に低く申告して追徴課税を受ける
といったリスクにつながります。

本記事では、土地評価の最初の落とし穴である「路線価=時価ではない」という基本を、一般の方にも分かりやすく整理します。

1. 路線価とは何か

路線価とは、国税庁が毎年7月に発表する「相続税・贈与税の基準となる土地の価額」です。
道路ごとに1㎡あたりの金額が決められており、その道路に接する土地の評価に用います。

しかし、この路線価は「市場での売買価格」とは性質が異なります。

● 路線価は“相続税のための特定目的の価格”

地価公示・地価調査・固定資産税評価とは別の体系で作られており、
市場の実勢価格とは多少のズレが生じることが前提になっています。

● 路線価は前年比変動をゆるやかに反映する

急激な価格変動を避けるため、市場価格の変動を平均化した形で反映されることが一般的です。


2. 路線価と時価がズレる典型例

路線価と時価は一致することの方が珍しく、以下のようなケースで差が出やすい傾向があります。

■① 市場価格が急変している地域

都市部の再開発や地方の値下がりなど、売買価格が短期間で変動しやすい地域では、路線価が追いつかないことがあります。

■② 個別の土地事情が路線価に反映されない場合

・変形地
・旗竿地
・間口が極端に狭い
・隣地の建物状況
など、個別事情は路線価に直接反映されません。

評価通達では補正率を使いますが、実勢価格と完全に一致するわけではありません。

■③ 土地の需要と供給が大きく偏っている場合

売主が多く買主が少ない地域、反対に買主が殺到する地域では、時価が路線価より大幅にズレることがあります。


3. 路線価を過信すると生じる“落とし穴”

路線価が「相続税の基準である」ということ自体は正しいものの、「時価と一致する」と思い込むと、次の問題が生じます。

● 過大申告につながる

実際の売買価額より路線価が高い場合、必要以上に税金を多く払ってしまいます。

● 過少申告のリスク

反対に、路線価が時価より大幅に低いのに、そのまま適用すると、
税務署から評価誤りを指摘され、加算税が発生する可能性があります。

● 売却時に「思っていた価格と違う」となる

相続税評価で1億円とされた土地が、売却時は7,000万円しかつかないケースもあります。
路線価を「実勢価格」と誤解していると、資産運用や分割協議にも影響します。


4. 実務で重要なのは「時価との乖離」を意識すること

相続税評価は路線価に基づいて行うことが基本ですが、
実務では次のポイントを押さえると、安全で適正な申告につながります。

■① 周囲の売買事例を確認する

不動産会社が提供する成約価格や査定情報は、時価の把握に役立ちます。

■② 路線価の補正が適切かチェックする

・間口狭小補正
・奥行価格補正
・側方道路補正
など、補正が漏れていないかが重要です。

■③ 専門家によるセカンドオピニオン

土地評価は金額が大きくなるため、税理士や不動産鑑定士の意見を取り入れることで評価誤りを避けられます。

結論

路線価は相続税の計算に必要な基準ですが、あくまで「市場価格とは異なる指標」です。
路線価をそのまま時価として扱うと、過大申告や過少申告につながり、思わぬ税負担を招く可能性があります。

土地評価では、
・路線価と時価の違い
・補正の必要性
・個別事情の反映の難しさ
を理解したうえで、慎重に評価することが大切です。

適正な評価を行うためには、周辺の売買状況や専門家の意見を踏まえながら総合的に判断することが求められます。

出典

・国税庁「財産評価基本通達」
・国税庁「路線価図」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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