副業を続けていると、「経費が増えてきた」「収入が安定してきた」「開業届を出したほうが良いのか」など、税務面で新しい課題が生まれます。
そんなときに大きな力を発揮するのが 青色申告 です。
青色申告は、正しい帳簿づけを行うことを条件に、多くの節税メリットを受けられる制度です。
第4回では、青色申告のメリット、65万円控除・10万円控除、30万円特例、家事按分、開業届の出し方まで、副業者が押さえておくべきポイントを整理します。
1. 青色申告の最大のメリットは「65万円控除」
青色申告には主に次の2種類があります。
■(1) 青色申告特別控除(65万円)
条件:
- 複式簿記で帳簿をつける
- 青色申告決算書を提出
- e-Taxで申告
- 期限内に申告する
複式簿記と聞くと難しい印象がありますが、会計ソフトを使えば実質的に自動化できます。
■(2) 青色申告特別控除(10万円)
- 簡易帳簿でOK
- 手書きやエクセルでも可
- 控除額は小さいが負担が軽い
副業が軌道に乗ってきたら、65万円控除を目指すと節税効果が格段に上がります。
2. 少額減価償却資産の「30万円特例」が強力
青色申告者は、30万円未満の備品を全額経費にできる「少額減価償却資産の特例」が使えます。
【対象となる主な備品】
- パソコン
- カメラ・レンズ
- マイク・照明
- 外付けSSD
- オフィスチェア
- 作業用デスク
- タブレット
- モニター
【ポイント】
- 年間の合計300万円まで
- 1つ30万円未満であること
- 副業に関連する用途であること
副業で動画・SNS・執筆を行う人には特にメリットが大きく、投資回収を早める強力な制度です。
3. 家事按分を使えば「自宅の一部」を経費にできる
青色申告では家事按分(あんぶん)も節税効果に大きく影響します。
自宅の家賃や光熱費を、業務で使用した割合に応じて経費にできます。
【按分の例】
- 家賃:仕事部屋が4畳/全体16畳 → 25%経費
- 電気代:作業時間が1日8時間 → 利用時間分を按分
- 通信費:スマホ利用が業務30% → 30%経費
- 水道代:動画撮影・料理系の場合など合理的理由がある場合
按分は「合理的に説明できるか」が基準です。
過度に大きな按分は不自然とされやすいため、無理のない範囲で設定します。
4. 家族への給与も経費にできる(青色事業専従者給与)
青色申告の大きなメリットのひとつに「家族への給与支払いを経費にできる」制度があります。
【対象】
- 配偶者
- 親族(生計を一にする15歳以上)
【条件】
- 専らその副業の業務に従事していること
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出
- 給与額が適正であること
- 支払いを実際に行うこと(振込が望ましい)
副業規模では利用のハードルが高いですが、収益が増えてきた人には非常に有効です。
5. 赤字の繰越ができる
青色申告では、赤字を最大3年間繰り越せます。
例えば、副業を開始した年に設備投資で赤字になった場合、翌年以降の黒字と相殺できます。
【赤字繰越のポイント】
- 青色申告の届け出が必要
- 現実の赤字であること(根拠資料必須)
- 計画的に投資すると税効果が大きい
副業を本業化したい人には特にメリットが大きい制度です。
6. 開業届と青色申告承認申請書の提出
青色申告を利用するには、開業届と青色申告承認申請書を提出します。
【提出タイミング】
- 開業届:副業を始めたらいつでも良い(遅れても罰則なし)
- 青色申告承認申請書:その年の3月15日まで(原則)
ただし、開業届を出すと「事業所得」であることが明確になるため、適用される制度が広がります。
7. 青色申告は“節税だけが目的”ではない
青色申告の効果は節税にとどまりません。
- 帳簿で収支が明確になる
- 無駄な支出に気づける
- 副業の収益性が把握できる
- 本業化したいときの基盤が整う
“節税のため”ではなく、
「副業を事業として育てていくための基盤」
と考えるほうが長期的に成功しやすいです。
結論
青色申告は、副業のステージが上がってきた人にとって最強の制度です。
【青色申告のメリットまとめ】
- 65万円控除/10万円控除
- 30万円特例(年間300万円)
- 家事按分の柔軟な適用
- 家族への給与を経費にできる
- 赤字の繰越
- 帳簿が整い事業管理がしやすい
これらを活用すれば、副業の利益を守りながら、事業としての基盤も強化できます。
次回の第5回では、副業の種類別に
「物販・SNS・動画・ブログ・投資型副業の税務と節税戦略」
を詳しく整理します。
出典
・国税庁「青色申告の特典」
・国税庁「少額減価償却資産の特例」
・国税庁「事業所得の基本」
・総務省「家事按分に関する取扱い」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
