副業を始めると必ず向き合うことになるのが「確定申告」です。
本業の会社で年末調整を済ませていても、副業収入が一定額を超えると自分で申告しなければなりません。
一方で、
- 20万円ルールの誤解
- 雑所得と事業所得の判断基準
- 副業バレを防ぐ住民税の扱い
- 提出書類の種類
など、初めての人がつまずきやすいポイントも多いものです。
第3回では、会社員の副業に焦点を当て、雑所得・事業所得・給与所得それぞれの申告方法を、実務レベルでやさしく整理します。
1. 副業で確定申告が必要になる条件
次のいずれかに該当すると、確定申告が必要です。
- 副業の所得(収入−経費)が 20万円を超える
- 副業先から給与をもらっており、源泉徴収されていない
- 給与を2か所以上から受け取っている
- 医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税)を申告したい
- 副業が「事業所得」に該当する
- 仮想通貨・株などの譲渡益がある
重要なのは「収入ではなく所得」で判断する点です。
例えば収入が50万円でも、経費が35万円あれば所得は15万円 → 確定申告は不要になるケースもあります(ただし住民税申告は必要)。
2. 雑所得と事業所得の違い
副業は一般的に「雑所得」か「事業所得」に分類されます。
■雑所得
- SNS・ブログ・YouTube収益
- ライティング・デザイン・スキル販売
- 単発のセミナー講師
- 継続性や独立性が弱い場合
雑所得は、必要経費を差し引いた金額を申告します。
■事業所得
- 継続的に事業として行っている
- 収益性・独立性がある
- 顧客が複数
- 仕事としての実態が明確
- “副業”というより“小規模事業”のイメージ
事業所得になると、
- 青色申告
- 65万円控除
- 30万円特例
など、節税メリットが大きくなります。
3. 確定申告の種類:青色申告か白色申告か
副業が軌道に乗っている人は、青色申告を検討する価値があります。
■白色申告
- 帳簿は簡易的でOK
- 控除はほとんどなし
- 事業規模が小さい人向け
■青色申告
- 65万円控除(条件あり)
- 10万円控除(簡易帳簿)
- 家族への給与を経費にできる
- 赤字を最大3年間繰り越せる
- 30万円未満の備品を全額経費にできる
開業届+青色申告承認申請書を提出することで利用できます。
4. 副業の確定申告に必要な書類
副業の種類によって必要書類が異なります。
【共通】
- 給与収入がある場合:源泉徴収票
- 副業の収入・売上の記録
- 経費のレシート・領収書
- 銀行明細や取引履歴(可能であれば)
【雑所得の人】
- 副業収入の明細
- 振込履歴
- 必要経費の整理(エクセルでも可)
【事業所得の人】
- 帳簿(会計ソフトなど)
- 青色申告決算書(青色の場合)
【副業先から給与を受けている人】
- 副業先の源泉徴収票
- 給与所得の源泉徴収税額を確定申告で精算
必要書類の整理は“書類を箱に入れるだけ”でも十分ですが、早めに整理しておくと申告がスムーズになります。
5. e-Taxを使えば申告は負担が大幅に軽くなる
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、流れに沿って入力するだけで申告できます。
【手順のイメージ】
- 所得の種類を選ぶ
- 収入・経費を入力
- 控除を入力(医療費・ふるさと納税など)
- 住民税を「自分で納付(普通徴収)」に変更(副業バレ対策)
- 申告書を送信
マイナンバーカードがあればスマホでも提出できます。
6.「副業バレ」を避けるための住民税の選択
副業が会社にバレる原因のほとんどは、住民税です。
会社は従業員の住民税を給与から天引きしますが、その税額が“副業分まで含まれた金額”になると違和感を持たれます。
【対策】
確定申告の「住民税選択」欄で
「自分で納付(普通徴収)」を選ぶ
こと。
こうすると、副業分の住民税は自分で納付するため、会社に通知される住民税額には反映されません。
7. よくある誤解と注意点
● 20万円以下でも住民税の申告は必要
→ 住民税には20万円ルールなし。
● 収入が少なくても、経費が多いと申告した方が有利
→ 確定申告で所得が小さくなれば住民税も減る。
● 給与収入がある人は、副業が少額でも“ほぼ必ず”申告を検討
→ 医療費控除・ふるさと納税との兼ね合いで必要になる。
● バレる原因は税金だけではない
→ SNS・勤怠・副業先の企業とのトラブルも要因。
結論
副業の確定申告は、最初は複雑に見えますが、
- 申告が必要な基準
- 所得の分類(雑所得・事業所得)
- 必要書類
- e-Taxの流れ
- 住民税の普通徴収
の5点を押さえておけば、スムーズに進められます。
副業バレも、確定申告の方法を誤らなければ防ぐことができます。
次回の第4回では、副業の節税効果を大きく高める
「青色申告のメリットと活用法」
を詳しく解説します。
出典
・国税庁「確定申告書等作成コーナー」
・国税庁「所得税法(所得区分)」
・総務省「住民税の普通徴収・特別徴収」
・主要副業サービスの税務説明資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
