50代になると、これまでの働き方に一区切りが見え始めます。
同時に、「この先の20年をどう働くか」「定年後の収入をどうつくるか」という課題も現実味を帯びてきます。
そんな中で注目されているのが、
「パラレルキャリア(複数の働き方を同時に持つこと)」です。
かつては“本業一本”が一般的でしたが、人生100年時代では、収入も働き方も一つに依存することがむしろリスクになるケースが増えています。
パラレルキャリアは、50代が今から無理なく始められ、定年後の働き方の柱にもなる現実的な選択肢です。
本記事では、パラレルキャリアの意味と、50代がどのように始めればよいのかを整理します。
■ パラレルキャリアとは何か
パラレルキャリアは、副業や転職と少し異なります。
- 本業の外にもう1つの活動を持つこと
- 収入を目的にしなくてもよい活動も含む
- 小さく始められ、柔軟に続けられる
たとえば以下のような形です。
- 会社員 × 地域企業の支援
- 会社員 × コーチング
- 会社員 × ボランティア/プロボノ
- 会社員 × オンライン講座の発信
- 会社員 × 副業での少額収入
- 会社員 × 家族の事業サポート
“複数の人生を同時に生きる”ことが、50代のキャリアを豊かにします。
■ なぜ50代でパラレルキャリアが必要なのか
① 会社だけに依存するのはリスクが高くなる
役職定年、組織改編、評価基準の変化…。
50代は会社の都合の影響を受けやすい年代です。
一方、パラレルキャリアを持っていると、
- 心理的な支えが増える
- 会社の評価に一喜一憂しなくなる
- 社外に居場所を持てる
- 定年後の選択肢が増える
という大きな安定になります。
② 経験の価値が社外で評価されやすい
50代の強みは「積み重ねた経験」にあります。
人事、総務、営業、管理職…どの分野でも、
- 現場感覚
- 判断の精度
- 人間理解
- 複雑な案件の処理経験
は、若手やAIでは代替が難しい価値です。
パラレルキャリアで社外に一歩出ると、
自分の経験が思っている以上に喜ばれる場面が多いのが特徴です。
③ 定年後の収入源を早めにつくれる
FPとしての視点では、パラレルキャリアは「収入の柱」を増やす強力な方法です。
- 定年後の収入不安が小さくなる
- 年金受給後も働き続けやすい
- 徐々に独立・業務委託に移行できる
- 繰下げ受給にもチャレンジしやすい
特に、
“小さく始めて大きく育てる”という50代ならではの戦略が有効です。
■ 50代に向いているパラレルキャリアの種類
■ 1. コーチング・キャリア相談
他者理解とコミュニケーション力が活きます。
人事経験者や管理職経験者と相性が良い分野です。
■ 2. 地方企業・中小企業の支援
研修設計、業務改善、採用、人事制度、事務サポート…。
“当たり前の経験”がそのまま価値になります。
■ 3. プロボノ(無償の専門支援)
費用を得ない代わりに、実績づくりやネットワーク構築に最適です。
副業への移行ステップとしても有効です。
■ 4. オンラインでの副業
- 文章作成
- 講座販売
- データ整理
- 相談サービス
- SNS発信
- 事務サポート
時間に縛られず、家庭と両立しやすいのが特徴です。
■ 5. 家族の事業のサポート
家族・親戚の小さな事業でも、パラレルキャリアの実績になります。
税務・会計・人事の基本スキルが特に役立ちます。
■ 50代がパラレルキャリアを始める3ステップ
STEP 1:できることの棚卸し
- 過去に評価された経験
- 楽しくできる仕事
- 周囲に相談されるテーマ
- 自分が譲れない価値観
“肩書きではなく、行動ベースで棚卸し”することで本当の強みが見えます。
STEP 2:小さく試す
いきなり収入を狙わなくて大丈夫です。
- 友人の相談に乗る
- 知人の会社で短時間手伝う
- コミュニティで役割を持つ
- スキルをSNSで発信してみる
小さな成功体験が次のステップに繋がります。
STEP 3:社外のつながりを広げる
インターンシップ、プロボノ、副業サイト、勉強会…。
社外に出ることで、
- “自分が役に立つ場”が広がる
- 新しい仕事が舞い込む
- 価値の再確認につながる
という好循環が生まれます。
結論
50代は、キャリアの終わりではありません。
むしろ「複数の働き方を組み合わせていく」第二ラウンドの始まりです。
パラレルキャリアは、
- 経験を生かせる
- 社外の居場所をつくれる
- 定年後の収入が安定する
- 学び直しと組み合わせやすい
- 人生全体の満足度が高まる
という、50代にこそ必要な働き方です。
小さく始めた活動が、将来の仕事につながることも珍しくありません。
「会社の外にも自分の居場所がある」と実感できた瞬間から、キャリアは再び動き始めます。
次回は、第5回「定年後も働きたい人へ── 70歳まで働くための仕事の見つけ方」をお届けします。
出典
- 厚生労働省 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
- 内閣府 「人生100年時代の働き方改革検討資料」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
