インターンシップと聞くと、大学生がキャリア形成の第一歩として参加する――そんなイメージが強いかもしれません。
しかし今、最もインターンシップが必要なのは、実は50代・ミドルシニア層です。
定年延長や70歳雇用の努力義務化で「働く期間」は長くなりました。
その一方で、50代になると会社の中での役割が固定化されたり、評価の軸が変わったりと、自分の価値を見失いやすい時期でもあります。
「このまま定年まで働き続けられるのだろうか」
「別の環境で通用するのだろうか」
そんな不安を抱える方にこそ、インターンシップは強力な選択肢になります。
本記事では、50代がインターンに参加する意味と、その効果を事例とともに解説します。
■ なぜ50代にインターンシップが必要なのか
ミドルシニア層は、長年積み重ねた経験や業務理解があるため、社内では安定した存在になっています。
しかし、その「安定」は裏返せば「閉じた環境」でもあります。
50代でよく聞かれる不安は次のとおりです。
- 社内の評価が落ち着き、役割が変わってきた
- 若い人中心の組織に変わりつつある
- 新しい技術や働き方の変化が速い
- 会社の価値観と自分の価値観にずれを感じる
- 65歳、70歳までの働き方が見えない
こうした状況は決して「能力の問題」ではなく、
会社という枠の中で“見えにくくなっているだけ”のことが多いのです。
インターンは、その枠を一度外に出てみる機会になります。
■ 社外で“当たり前”が価値に変わる
多くの50代は「自分のスキルが社外で通じるのだろうか」と不安を抱えています。
しかし実際には、社外の小さな企業やベンチャーでは、50代の経験は驚くほど求められています。
特に次のような分野では圧倒的な価値があります。
- 新入社員研修や育成の経験
- 業務プロセスの改善
- 事務・管理・総務・人事の基礎知識
- 組織内コミュニケーションのノウハウ
- 問題解決の手順やリスク管理の感覚
大企業や成熟した組織では「当たり前」のことでも、
若い会社にとっては「初めて聞く貴重な知恵」です。
インターン中に、
「そんな考え方があるんですか!」
「それは当社にとって目からウロコです」
と言われることは珍しくありません。
この経験が、50代にとって何よりの自信回復になります。
■ 新しいコミュニティに入ると、自分の心が軽くなる
社内の肩書きや役職から離れることで、自分の本来の姿に戻れる瞬間があります。
50代の方がインターンに参加した際によく聞くのは、
- 若い社員からニックネームで呼ばれるのが新鮮
- 年齢や立場を気にせず意見を言える
- 相談されると嬉しい
- これまでの経験が誰かの役に立つことを実感する
といった声です。
社外に出ると、
「人としてどう見られるか」だけになるため、ストレスが軽減されます。
新しいつながりが生まれることで、キャリアへの視野が広がります。
■ インターンは“学び直し”への扉
インターンを経て、次のステップに進んだ方も多くいます。
- コーチングを学び始めた
- 新しい資格に挑戦した
- 地方企業の支援に関わるようになった
- 副業や独立の準備を始めた
- 家族関係に向き合うきっかけになった
社外の世界に触れることで、停滞していた気持ちが動き出します。
特に50代は経験値が高いため、学びを吸収する力が強く、
インターン後の成長スピードはむしろ若い頃より速いこともあります。
■ 収入面でもインターンが役立つ理由(FP視点)
税理士・FPとしての視点では、インターンは収入戦略にも直結します。
- 70歳までの働き方のイメージが明確になる
- 副業・業務委託の可能性を探れる
- 社外の実績が「定年後の仕事」に繋がる
- パラレルキャリアのきっかけになる
- 年金+働く収入の二本立てが作りやすくなる
今後は、「1社に依存する働き方」よりも、
複数の働き方を組み合わせる方が安定する時代です。
インターンはその準備段階として非常に相性が良いのです。
結論
インターンシップは若い人だけのものではありません。
むしろ、50代・ミドルシニアこそ活用すべき選択肢です。
- 自分の価値を再認識できる
- 社外からの評価で自信が戻る
- 新たな学びや挑戦につながる
- 定年後の働き方のモデルが見つかる
- 働くことの意味がもう一度明確になる
これらの気づきは、キャリア後半の大きな財産になります。
誰かが信じてくれるだけで、人は本来持っていた力を再び伸ばせる。
インターンは、その「信じてもらえる瞬間」に出会える場所でもあります。
次回は、第3回「50代の学び直し(リスキリング)── 自分の未来をつくる学びの選び方」をお届けします。
出典
- 日本経済新聞「50代こそインターン」(2025年11月)
(記事内容を参考に構成)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
