確定申告書を提出して「やっと終わった」と感じる人は多いでしょう。
しかし、実は確定申告が終わってからが次の年度のスタートです。
還付金の受け取り、住民税・国民健康保険料への反映、記帳データの整理など、
「申告後にやるべきこと」をきちんと押さえることで、次の申告を格段にスムーズにできます。
本稿では、確定申告後の実務的なフォローを体系的に解説します。
還付金の受け取りと確認
還付申告を行った場合、申告書に記載した口座に税金が自動的に振り込まれます。
振込時期の目安は以下のとおりです。
| 提出方法 | 還付までの目安期間 | 備考 | 
|---|---|---|
| e-Tax(電子申告) | 約3週間 | 最も早い・通知メールあり | 
| 郵送・窓口提出 | 約1〜1.5か月 | 手作業処理のため遅め | 
還付金が届かない場合の確認ポイント:
- 振込先口座の記載ミスや旧名義でないか
 - 税務署側の処理が「書類確認中」になっていないか
 - マイナポータル連携を設定していない場合、進捗は「還付金処理状況確認ページ」で照会可能
 
還付金は非課税所得であり、翌年の申告対象には含めません。
住民税・国民健康保険料への反映
確定申告をすると、その内容が自動的に市区町村に送信され、
住民税・国民健康保険料・介護保険料の計算に反映されます。
| 項目 | 反映時期 | 通知方法 | 
|---|---|---|
| 住民税 | 6月頃 | 「住民税決定通知書」で通知 | 
| 国民健康保険料 | 6〜7月頃 | 自治体から別途通知 | 
| 介護保険料 | 7月頃 | 対象者に個別通知 | 
青色申告特別控除や小規模企業共済控除などの所得控除が正確に反映されているか、通知書で確認しておくと安心です。
誤りがあれば自治体窓口に申し出て修正できます。
記帳データ・証憑の整理
確定申告後こそ、帳簿や領収書の整理を行う好機です。
次年度の準備をスムーズにするため、以下の点をチェックしておきましょう。
- 仕訳帳・総勘定元帳を年度単位でバックアップ
クラウド会計ソフト利用者はCSVやPDFで出力して保存。 - 電子帳簿保存法に基づく保存期限を確認
帳簿類は7年間、証憑(請求書・領収書など)は原則7年保存。 - 電子取引データの保管場所を明確に
メール添付PDF、クラウド請求書、スマホスキャンなどを統一フォルダに整理。 - 仕訳パターン・経費区分を見直す
次年度の仕訳効率化に役立つテンプレートを更新。 
年度を区切って整理しておくことで、税務調査対応にも備えられます。
翌年度に向けた準備
確定申告を終えた時点で、すでに次の1年が始まっています。
今のうちに「税務・経理の仕組み」を整えておくことで、翌年の申告が格段にラクになります。
- 青色申告決算書の書式を再確認(会計ソフト設定を翌年度用に更新)
 - 事業用口座・クレジットカードを分離(経費管理の明確化)
 - 固定資産台帳・減価償却一覧を作成(耐用年数と残存価額を管理)
 - 控除証明書の電子交付設定を確認(生命保険料・iDeCoなど)
 - マイナポータル連携を維持・更新(年度切り替えで再承認が必要な場合あり)
 
また、電子帳簿保存制度に対応したソフトやクラウドストレージを利用すれば、日常的な記録が自動で電子保存対象になります。
e-Tax利用者のフォローアップ
電子申告を行った場合、「受信通知」や「申告データ控え」の保存が重要です。
これらは法的に「提出証拠」とみなされるため、以下のように管理しておきましょう。
- e-Taxの「送信結果(受信通知)」PDFを保存
 - 国税庁作成コーナーの「控えデータ(.data形式)」をダウンロード
 - クラウドや外付けメディアに2重保存(最低7年保管)
 
税務署からの問い合わせや追完要求に備えて、電子データの所在を明確にしておくことが肝要です。
翌年への税制改正を意識する
令和7年度税制改正では、以下のような改正が予定されています。
- 子育て世帯向け一般生命保険料控除の上限引き上げ(4万円→6万円)
 - 電子帳簿保存法の簡素化と義務化完全適用
 - マイナポータル連携による控除証明書の自動反映拡大
 
これらは、次年度の申告準備段階から意識しておくとスムーズです。
特に控除証明書の電子交付は、設定さえしておけば「自動取得・自動入力」が可能になります。
結論
確定申告は、提出して終わりではありません。
申告後の還付金確認・住民税チェック・記帳整理・翌年準備までを一連のサイクルとして考えることで、
次年度以降の業務効率と税務精度が大きく向上します。
特に電子帳簿保存とマイナポータル連携を活用すれば、
「申告のための作業」から「日常経理の延長としての申告」へと進化させることができます。
確定申告後の今こそ、税務管理を一段上のステージに整備するチャンスです。
出典
・国税庁「確定申告書等作成コーナー」
・国税庁「還付金処理状況確認サービス」
・総務省「住民税・国民健康保険料の算定基準」
・デジタル庁「電子帳簿保存法・マイナポータル連携」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
  
  
  
  