■ 1.空き家を相続したら、税金はどうなる?
親や祖父母の家を相続したけれど、
「誰も住まないから、とりあえずそのままにしてある」という人は多いもの。
ところが――
🧾 相続した空き家を放置すると、思わぬ税金負担が増えることがあります。
特に注意が必要なのが 固定資産税。
相続後の管理を誤ると、税額が最大6倍になるケースもあるのです。
■ 2.固定資産税のしくみをおさらい
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人に課される税金。
税率は一律 1.4%(標準税率)です。
たとえば、評価額が2,000万円の家なら…
→ 2,000万円 × 1.4% = 28万円/年。
ここに大きく影響するのが、
「住宅が建っているかどうか」で変わる 土地の特例 です。
■ 3.住宅がある土地は「6分の1」に軽減
住宅の敷地は、次のような特例が受けられます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額 × 1/6 |
| 一般住宅用地(200㎡超) | 評価額 × 1/3 |
つまり、家が建っているだけで土地の税金が大幅に軽減されているのです。
しかし――
もしその家を放置し、老朽化して「危険空き家」と判断されると、
この特例が解除されてしまうのです。
■ 4.「特定空き家」に指定されると税額が6倍に
2015年施行の「空家等対策特別措置法」では、
以下のような家が「特定空き家」として指定されることがあります。
- 倒壊の恐れがある
- ゴミや雑草で衛生状態が悪い
- 周囲の景観を損ねている
- 放火など防災上の危険がある
💬 一度「特定空き家」に指定されると、
固定資産税の住宅用地特例(1/6・1/3)が適用されなくなります。
つまり、土地の税金が最大6倍に跳ね上がるということ。
■ 5.放置しても「課税通知」は届き続ける
空き家を相続すると、名義変更をしていなくても、
毎年、固定資産税の納付書が届きます。
名義が親のままでも、相続人が実質的な所有者と見なされるため、
「登記をしていない=税金を払わなくていい」ではありません。
支払いを怠ると延滞金が発生し、最悪の場合は差押えのリスクもあります。
■ 6.空き家を相続したときの選択肢
| 選択肢 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 住む | 固定資産税が軽減される | 維持管理費がかかる |
| ② 売却する | 現金化・維持費不要 | 相続登記が必要・譲渡所得税あり |
| ③ 貸す | 家賃収入が得られる | 管理・修繕・契約トラブル対応が必要 |
| ④ 解体する | 将来のリスク回避 | 特例が外れて税額上昇(要注意) |
💡 ポイントは、「放置」以外の選択を早めに決めること。
■ 7.空き家を売るなら「3,000万円控除」が使える
一定の条件を満たせば、
相続空き家の譲渡所得3,000万円控除を受けられます。
【主な条件】
- 相続開始時に被相続人が一人暮らしだった
- 1981年(昭和56年)5月31日以前の旧耐震住宅
- 相続から3年以内の年末までに売却
- 解体して更地にして売却も可
💬 この制度を使えば、古い家を売っても譲渡益に税金がかからないことも。
放置して特定空き家になる前に、早めの判断が節税につながります。
■ 8.「家を壊す」ときに注意すべき落とし穴
古家を解体すると、確かに倒壊リスクはなくなりますが、
建物がなくなると固定資産税の軽減特例も消滅します。
つまり、解体後は翌年から土地の税額が最大6倍に。
そのため、
- 売却予定がないなら解体は慎重に
- 解体する場合は売却と同時進行が理想です。
■ 9.まとめ:空き家を“放置”しない3つの行動
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 現状を確認 | 固定資産税評価額・老朽度・名義をチェック |
| ② 方針を決める | 住む・貸す・売る・解体の方向性を明確に |
| ③ 手続きを進める | 登記・税金・補助金など専門家と相談 |
💬 「放置」は、時間が経つほど“損”になります。
早めの行動が、税金・相続・家族の負担をすべて軽くします。
🌳 さいごに
空き家問題は、「税金の話」だけではなく、
“思い出の家をどう次につなぐか”という家族の選択でもあります。
固定資産税を減らす制度を上手に使いながら、
安心して次の世代に引き継ぐ準備を始めましょう。
参考資料:
- 総務省「固定資産税に関するQ&A」
- 国土交通省「空家等対策特別措置法」
- 国税庁「相続空き家の3,000万円特別控除」
- 東京税理士会「令和7年度第5回会員研修会資料」塩野入文雄講師(2025年5月8日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
