第7回 知ってトクする!教育・住宅・子育ての3つの非課税贈与

税理士
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■ 1.“贈与”にも税金がかかる?

子どもや孫にお金を渡すとき、たとえ「援助のつもり」でも、
法律上は「贈与」とみなされる場合があります。

この贈与には、原則として年間110万円を超える部分に贈与税がかかります。
ただし、教育や住宅、結婚・子育てといった「将来に向けた支援」については、
一定の条件のもとで非課税(税金がかからない)になる特例が設けられています。


■ 2.3つの非課税制度の概要

令和7年度の制度(改正後)では、次の3つの特例が引き続き利用可能です。

制度名主な対象非課税限度額適用期限
教育資金の一括贈与子・孫(30歳未満)最大1,500万円(学校関係)令和8年3月31日まで
住宅取得等資金の贈与子・孫(20歳以上)最大1,000万円(省エネ住宅の場合)令和8年12月31日まで
結婚・子育て資金の贈与18歳以上50歳未満最大1,000万円(うち結婚費用300万円まで)令和9年3月31日まで

■ 3.① 教育資金の一括贈与非課税

祖父母などが子や孫のために、教育費をまとめて渡すときに使える制度です。

銀行や信託銀行で「教育資金口座」を開設し、
そこに贈与額を入金しておく仕組み。

  • 学校への入学金・授業料・塾代・留学費用などが対象
  • 原則、30歳までに使い切ることが条件
  • 使い切れなかった残額は、30歳時点で贈与税の対象になる

🎓 教育のために“先にまとめて贈る”ことを想定した制度です。
「孫が高校入学する前にまとまった学費を支援したい」場合に最適です。


■ 4.② 住宅取得等資金の贈与非課税

親や祖父母が、子・孫のマイホーム購入を援助する場合に利用できる制度です。

  • 対象は「新築・取得・増改築」にかかる費用
  • 年齢は20歳以上(令和6年以降は18歳以上予定)
  • 贈与を受ける人の合計所得金額が2,000万円以下であることが条件

住宅の種類によって非課税枠が異なります:

住宅の種類非課税枠
ZEH水準・省エネ住宅など1,000万円
一般住宅500万円

🏠 「家を買うタイミングで援助したい」「頭金の一部を出してあげたい」というときに有効です。


■ 5.③ 結婚・子育て資金の贈与非課税

こちらは「結婚・出産・育児」にかかる費用を支援する制度です。

信託銀行などで専用口座を設け、
結婚費用や出産・育児に関する支出にあてることで非課税になります。

  • 結婚に関する費用(挙式・披露宴など)は上限300万円まで
  • 残りは出産・育児関連(不妊治療費・保育料・ベビー用品など)に利用可
  • 贈与を受ける人は18歳以上50歳未満
  • 原則、50歳までに使い切らない残額は課税対象

👶 「孫の出産祝いを節税しながら支援したい」場合に使えます。


■ 6.制度ごとの特徴をまとめると…

制度対象目的管理方法期限
教育資金学費・塾代など金融機関で専用口座30歳まで
住宅資金家の新築・購入・改築自由に振込・領収書保管令和8年末
結婚・子育て資金結婚式・出産・保育金融機関で専用口座50歳まで

■ 7.注意点:「名義預金」や「形式だけの贈与」はNG

これらの非課税制度は、実際に支出が確認できることが条件です。
口座に入金しただけで使わなければ、
最終的に課税対象になってしまいます。

また、子や孫の名義で口座を作っても、
実際には祖父母が管理しているようなケースは「名義預金」とされるリスクも。
「贈与契約書」や支払証明書をきちんと残すことが大切です。


■ 8.まとめ:節税よりも「人生支援」の視点で

3つの非課税贈与は、単なる節税策ではなく、
次の世代の教育・住まい・子育てを応援するための制度です。

贈与の目的制度期限
教育・学習支援教育資金非課税令和8年3月末まで
住宅取得支援住宅資金非課税令和8年12月末まで
結婚・育児支援結婚・子育て資金非課税令和9年3月末まで

💬 節税のために贈るのではなく、
「どんな想いを、どんな形で次の世代に伝えるか」
その設計こそが、本当の“相続対策”です。


■ 次回予告

次回(第8回)は、
💡「相続時精算課税制度の見直しと、暦年贈与との使い分け」
──“まとめて贈る”か“毎年贈る”か、その判断ポイントをやさしく解説します。


参考資料
東京税理士会「令和7年度第5回会員研修会資料(塩野入文雄講師)」
財務省『令和5年度税制改正大綱』/国税庁「贈与税の非課税制度」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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