相続税は、多くの人にとって人生で最も大きな税金の一つになることがあります。
しかも実務では、
- 不動産はある
- 自社株はある
- でも現金が少ない
というケースも少なくありません。
特に、
- 地方地主
- 賃貸不動産オーナー
- 中小企業経営者
などでは、
「財産はあるのに税金が払えない」
問題が起きやすくなります。
相続税は原則として、
「現金一括納付」
です。
しかし、現実には一括納付が難しいケースもあるため、
- 延納
- 物納
という制度が設けられています。
ただし実務では、
- 要件
- 担保
- 審査
- 利子税
など、多くの条件があります。
今回は、国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」を参考にしながら、相続税の納付問題について、実務目線で整理していきます。
相続税は原則“現金一括”
まず重要なのは、相続税は原則として、
「金銭一括納付」
だという点です。
つまり、
- 不動産
- 自社株
- 山林
などで財産を相続しても、
税金そのものは現金で払う必要があります。
そのため実務では、
「資産はあるが現金がない」
問題が発生しやすくなります。
なぜ“払えない相続税”が起きるのか
背景には、日本の資産構造があります。
例えば、
- 自宅不動産
- 賃貸不動産
- 非上場株式
などは、評価額が高くなりやすい一方、すぐ現金化できるとは限りません。
特に、
- 地方不動産
- 同族会社株式
- 空き家
などは、売却自体が難しいケースもあります。
つまり、
「紙の上では資産家」
でも、
「実際には現金不足」
ということが起きるのです。
延納とは何か
延納とは、簡単に言えば、
「分割払い」
です。
一定要件を満たす場合、相続税を年賦で支払うことができます。
ただし、
- 申請必要
- 審査あり
- 利子税あり
です。
つまり、
自動的に認められる制度ではありません。
延納には担保が必要になることも
延納では、原則として担保提供が必要になります。
例えば、
- 不動産
- 有価証券
などです。
特に高額相続税では、担保評価や管理も重要になります。
そのため実務では、
- どの財産を担保にするか
- 将来売却予定はあるか
なども検討が必要になります。
利子税負担も無視できない
延納では、利子税が発生します。
つまり、
「税金を後払いするコスト」
があります。
金利環境によって負担感は変わりますが、長期間になると無視できません。
そのため実務では、
- 売却
- 借入
- 保険活用
- 延納
などを比較して判断することがあります。
物納とは何か
物納とは、
「現金ではなく財産そのものを納める制度」
です。
例えば、
- 土地
- 建物
- 株式
などで納付するケースがあります。
ただし現在は、
「まず延納」
が優先されます。
つまり、
- すぐ物納
- 自由に物納
ではありません。
物納は想像以上に厳しい
実務では、
「土地を渡せば終わり」
と思われることがあります。
しかし実際には、
- 管理処分不適格財産
- 境界問題
- 担保設定
- 借地権
- 老朽化
など、多くの制限があります。
つまり、
「国が受け取りやすい財産」
である必要があります。
そのため、
- 山林
- 空き家
- 崖地
- 不整形地
などは難しいケースがあります。
物納順位も決まっている
物納には優先順位があります。
一般的には、
- 国債・上場株式等
- 土地・建物
- その他財産
などです。
つまり、
「何でも自由に選べる」
わけではありません。
ここは実務上かなり重要です。
自社株相続は特に難しい
中小企業では、
- 自社株評価高額
- 現金不足
が起きやすくなります。
しかし自社株は、
- 換金困難
- 非公開
- 支配権問題
などがあるため、納税資金確保が難しくなることがあります。
そのため、
- 生命保険
- 事業承継税制
- 持株整理
などが重要になります。
“不動産を売ればよい”とは限らない
実務では、
「売却して納税すればよい」
と思われることがあります。
しかし現実には、
- 買い手不足
- 地方空き家
- 老朽化
- 共有問題
などがあります。
特に地方では、
「相続税評価はある」
のに、
「売れない」
ケースもあります。
つまり、
“評価額”
と
“換金可能性”
は別問題です。
空き家問題ともつながる
現在、日本では空き家問題が深刻化しています。
背景には、
- 高齢化
- 人口減少
- 地方過疎
- 相続未整理
などがあります。
さらに、
「売れないが維持費はかかる」
不動産も増えています。
つまり今後は、
- 相続税
- 不動産流動性
- 地方インフラ
が、さらに密接につながる可能性があります。
超高齢社会で“資産はあるが現金がない”が増える可能性
現在、日本では高齢世代へ資産が集中しています。
しかしその資産は、
- 不動産
- 自社株
- 地方土地
など、流動性が低いものも多くあります。
そのため今後は、
「資産家なのに現金不足」
という問題がさらに増える可能性があります。
つまり相続税問題は、
単なる税制問題ではなく、
- 高齢化
- 地方経済
- 不動産市場
- 事業承継
とも深く結びついています。
結論
相続税は原則として、
「現金一括納付」
です。
しかし実務では、
- 不動産中心
- 自社株中心
- 現金不足
などにより、一括納付が難しいケースも少なくありません。
そのため、
- 延納
- 物納
という制度があります。
ただし実際には、
- 担保
- 利子税
- 審査
- 財産要件
など、多くの条件があります。
また、
- 評価額
- 売却可能性
が一致しないことも重要です。
だからこそ相続対策では、
- 節税
- 納税資金
- 財産流動性
- 不動産管理
- 事業承継
まで含めた総合的な視点が重要になります。
次回は、「e-Taxで相続税申告はどこまでできるのか(電子申告編)」をテーマに、デジタル化が進む相続税実務について、e-Tax・マイナポータル・電子化の現状と課題を整理していきます。
参考
国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」令和7年4月
国税庁「延納制度・物納制度」令和7年
国税庁「タックスアンサー 相続税」令和7年